2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K03458
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川股 隆行 東北大学, 工学研究科, 助教 (00431601)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スピンによる熱伝導 / 熱伝導 / 2次元スピン系 |
Outline of Annual Research Achievements |
長年の熱伝導研究によって、低次元量子スピン系の物質では局在電子スピンが大量の熱を運ぶことがわかってきた。その“スピンが熱を運ぶ現象”を利用した新しい絶縁性高熱伝導材料の開発が期待されている。そのため、(目的Ⅰ)高スピン熱伝導を有する物質を創製すること、そして、(目的Ⅱ)高スピン熱伝導の機構「JSとスピン熱伝導の大きさの関係」を解明することを本研究の目的とした。 (目的Ⅰ)La2CuO4を高品質化することによって、過去に報告されているスピン熱伝導を向上させることを目的とした。単結晶の育成に成功した。しかしながら、最適な還元アニール条件が決まらず、スピン熱伝導の大きさは、過去の報告と同程度であり、向上はしていない。これは、アニール条件が最適ではない可能性が高いため、より最適な還元アニールを探索する予定である。 (目的Ⅱ)「JSとスピン熱伝導の大きさの関係」の解明のため、同じ結晶構造を持つLaSrMnO4、La2CoO4、La2NiO4に注目し、単結晶の育成を行い熱伝導を測定した。 ・LaSrMnO4とLa2CoO4の単結晶の育成に成功した。熱伝導の結果から、低温においてスピン熱伝導の寄与が存在する可能性が高いことがわかった。今後は、スピン熱伝導の存在を明らかにするため、異方性、アニール効果、不純物置換効果を調べる予定である。 ・La2NiO4の単結晶の育成に成功した。熱伝導の異方性と不純物置換効果から、高温に大きなスピン熱伝導が存在すると結論付けた。この大きさは、過去の報告よりも10倍以上大きいことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(目的Ⅰ)のLa2CuO4に関する研究は、スピン熱伝導の観測はできたが、大幅に向上させることはできなかった。そのため、若干遅れ気味である。 一方、(目的Ⅱ)高スピン熱伝導の機構「JSとスピン熱伝導の大きさの関係」を解明は、計画以上に大幅に進展することができた。研究計画として考えていたすべての物質の単結晶の育成に成功した。さらに、LaSrMnO4とLa2CoO4ではスピン熱伝導の寄与が存在する可能性が高いことがわかり、La2NiO4では大きなスピン熱伝導が存在することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
(目的Ⅰ)のLa2CuO4に関する研究は、最適な還元アニール条件を探索する計画である。Ar、H2、真空など、様々な雰囲気において、幅広い温度範囲でアニールを行う予定である。 (目的Ⅱ)LaSrMnO4とLa2CoO4では、スピン熱伝導の存在を明らかにするため、異方性を調べること、アニール効果を調べること、不純物置換効果を調べることを行う予定である。 また、La2NiO4は、ほぼ最適なアニール条件がみつかり、スピン熱伝導の観測に成功している。このスピン熱伝導がさらに向上するかを調べるため、アニール条件の最適化を行う予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)次年度使用額は、今年度の研究を効率的に実行したことによって生じた未使用額である。また、コロナ禍により学会がオンライン開催になっために生じた未使用額である。 (使用計画)次年度の請求額と合わせて、物品費(消耗品費)として使用する予定である。
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