2021 Fiscal Year Research-status Report
Experimental study on the critical velocity of superflow in a quasi-one dimensional helium
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21K03462
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
谷口 淳子 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (70377018)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超流動 / 低次元量子系 / 臨界速度 / 量子渦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題『擬1次元ヘリウム系における超流動の臨界速度の研究』は,1次元極限近傍の超流動の臨界速度を調べることによって,1次元系特有の量子揺らぎの効果,および素励起について知見を得ることを目的としている.本研究の開始前は,孔径を,超流動流の散逸に主要な役割を果たす量子渦の渦芯の大きさ(0.3 nm)に近づけていく過程で,臨界速度が劇的に減少することが理論的に予想されていた.一方で,実験的にそのような孔径における超流動流の測定技術はいまだ確立されていないという状況にあった.今年度(1年目)は,孔径3 nm,長さ5-20 umのナノ細孔束における4Heの流れを測定するための試験的な測定系を構築し,測定を行った.その結果,バルクの超流動転移温度(Tl~2.15 K)以下で超流動流が観測され始め,さらに1.5 K付近で,その超流動流の流速が急な上昇が観測された.Tlでの超流動流の出現は,残存するμmサイズの空間におけるバルク液体4Heの寄与,一方,1.5 K以下における流速の急上昇は,ナノ細孔中4Heの超流動流の寄与と考えられる.孔径3 nmという小さい孔径で,直流の超流動流の観測に成功したのは初めてであり,1次元極限近傍の臨界速度の定量的測定へ向けて,大きな進展であった.今後の課題は,バルク超流動の寄与を除去し,ナノ細孔中超流動の臨界速度を評価することである.今年度の研究成果は,2021年8月に量子流体・固体国際会議で,さらに9月に日本物理学会秋季大会にてそれぞれ1件ずつ,発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の孔径の半分程度のナノ細孔において,直流の超流動流の観測に初めて成功したことは,重要な進展といえる.今後,バルク超流動の寄与を除去する手法を確立し,ナノ細孔中超流動4Heのみの超流動流の大きさを評価することが課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
直近の課題は,バルク超流動の寄与を除き,ナノ細孔中の超流動流を分離することである.そのために,すでに十分確立されている超流動の観測手法であるねじれ振り子法をナノ細孔試料中4Heに適用することで,まず細孔中で超流動が出現する(”転移”)温度を明らかにすることを目標とする.それにより,バルクの超流動のみが存在する温度領域を特定することが可能になる.その後,バルクの超流動密度や粘性率の温度変化に関する過去の研究をもとに,バルク超流動流の寄与を推定し,ナノ細孔中超流動自体の臨界速度の大きさを明らかにする.さらに,その臨界速度の温度・圧力依存から,超流動流を破壊する素励起や量子渦生成に必要なエネルギーなどについての知見を得る.
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Causes of Carryover |
研究をより迅速に進めるために,今年度はまず研究基盤整備のほうに重点を置いて,希釈冷凍機システムの構築を進めた.そのため,臨界速度の測定系の改良が遅れ,測定系の材料費や,寒剤の使用量が当初の見込みを下回った。そのため,次年度使用額が生じた.
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Research Products
(3 results)