2023 Fiscal Year Research-status Report
融剤法における希土類キラル金属磁性体の不斉合成とその物性研究
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21K03467
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
大原 繁男 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60262953)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | カイラル結晶 / カイラル磁性 / 反強磁性カイラルらせん磁気秩序 / 不斉合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
GdNi3Ga9の良質なカイラル結晶の合成に至り,円偏光共鳴X線回折により,その磁気構造を明らかとした.GdNi3Ga9の磁気構造は反強磁性磁気秩序を基本としながら,結晶カイラリティを反映して,長周期のカイラル螺旋磁性となっていることがわかった.これはこれまでにあまり報告のない例である.左右円偏光を用い,磁気構造も左右性を持つことも明確となった.また,NiをCoに元素置換することで,磁気秩序温度を抑制,磁気構造を制御できることがわかった.対称および反対称磁気相互作用のバランスが変化していると考えられることから,詳細な研究を進めて,その根本原理を解明したい. SmNi3Ga9について,良質な結晶育成条件の探査を進め,課題となっていた磁化曲線の異常は磁性体及び超伝導体の不純物によることが判明した.超伝導体については微細な状態となったGaが疑われる.一連の同じ物質系の試料にも同様に不純物が含まれていることが予想されるが微量であり,磁気モーメントの小さいサマリウムの化合物においてのみ,測定に影響がでていたと考えられる.これにより,SmNi3Ga9はイジング型の反強磁性体であることを明確にした.SmNi3Ga9では磁化容易軸が結晶カイラリティの特徴的な軸と一致しており,反対称磁気相互作用がはたらかない状況にある. 本研究の推進により,無機カイラル結晶の左右性制御は,良質な単結晶合成条件の追求を通してのみ可能と考えられるようになった.左右性をもつ,すなわちエネンチオピュアな結晶を単結晶と表現することが必要である.現実には,多くの無機カイラル結晶の場合には,いくらか左右が混じることが不可避かもしれない.研究の推進を妨げている要因に,研究室系では非破壊で結晶中の左右の混在割合を観測する方法がないことがある.今後,伝導電子の輸送現象に伴うスピン偏極を利用するなど,測定方法の開発が望まれる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに2つのカイラル物質について測定に用いることができる水準の結晶合成に至り,物性評価を行った.目標に到達できたことから,おおむね順調と判断できる.ただし,参加を予定していた国際会議が中止となり,成果発表が翌年度に繰り越すこととなった.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究のひとつのまとめとして,得られた知見をもとに,成果を国際会議で報告する. 今後は,元素置換試料の合成技術を高める.それにより,元素置換による物性制御をさらにすすめ,希土類金属間化合物のカイラル磁性体における磁気相互作用の根本理解にを進める.
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Causes of Carryover |
参加を予定していた国際会議が中止となったため次年度使用額が生じた.すでに,2024年4月にトルコで開催された国際会議において本研究課題について招待講演を行った.
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