2021 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical study of spin and thermal transport near a phase transition in magnetic materials
Project/Area Number |
21K03469
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青山 和司 大阪大学, 理学研究科, 助教 (00623133)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | カイラリティ / 磁気スカーミオン / 相転移 / 輸送現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度の主な研究目的は、磁気的フラストレーションを有する磁性体の輸送特性をカイラリティという観点から明らかにすることであった。カイラリティに関連した磁気秩序として、スカーミオン結晶が知られている。磁場下の三角格子J1-J3ハイゼンベルグモデルを対象に、フラストレーションと熱揺らぎの効果によって実現するスカーミオン結晶相、及びスカーミオンと反スカーミオンのランダムドメイン相であるZ相における輸送現象をモンテカルロとスピンダイナミクスを組み合わせた数値シミュレーションにより調べた。これまでに、Z相からスカーミオン結晶相への相転移温度においてスピン流の伝導率が増大することが明らかとなったが、当初期待されたホール応答には明確な異常は得られていない。他方、ターゲット相が実現している中温領域では、カイラリティ起源のホールシグナルが熱揺らぎによってマスクされている可能性や、磁場下であることを反映してスピン流と熱流のクロス相関が非自明な効果を生み出している可能性もあり、やや状況が複雑であることも分かってきた。 こうした状況の中、ゼロ磁場のカイラル秩序にも視野を広げ、カゴメ格子J1-J3ハイゼンベルグモデルにおいて、ベースとなる格子にブリージング格子歪みが存在する場合には、通常磁場下で実現するスカーミオン結晶がゼロ磁場でも実現可能であることを見出した。本結果は、Phys. Rev. B誌にLetterとして論文掲載された。 また、相転移のユニバーサリティクラスと輸送現象の相関を調べるため、3次元立方格子上のXXZ反強磁性体の数値解析にも着手し、現在までに、異方性の有無によらずスピン伝導率が相転移温度に向かって増大することを確認しており、低温秩序相での振る舞いを含め今後さらなる解析が必要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スピン流の伝導率と磁気相転移には強い相関があることが数値計算により明らかとなり、また、カイラリティとホール応答の関係は検討の余地があるものの、当初想定していなかったカイラル秩序(ゼロ磁場スカーミオン結晶相)が実現する新たな舞台を見出せたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
フラストレート磁性体におけるカイラリティと輸送現象の相関に関しては、カイラル秩序が実現する舞台として今回新たに開拓したブリージングカゴメ格子J1-J3反強磁性体の研究を押し進め、ゼロ磁場での輸送特性の理解を目指す。また、3次元系おける相転移の性質と輸送特性との関連については、相転移温度以下の低温磁気秩序相における輸送特性を解析的に評価し、数値計算結果との比較検討を行う。
|
Research Products
(2 results)