2023 Fiscal Year Research-status Report
1細胞計測に基づく細胞モデルとそれに基づく形態形成の理論の開発
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21K03482
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
山下 雄史 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (50615622)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | シミュレーション / 細胞分化 / 領域形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、様々な分子生物学的な実験がおこなわれ、細胞の分子レベルの状態が生体組織レベルの現象に影響を与えていることが分かってきた。すでに、単純な反応拡散方程式モデルによって生物が持つ複雑な形態を再現できることが分かり、形態形成の物理学が大きく発展しているが、これだけでは細胞の状態が生体組織レベルの現象を引き起こすメカニズムの解明は難しい。一方で、single-cell RNA-seqのような実験により1細胞情報を計測し、細胞の分子レベルの状態を特徴付けることが可能になってきている。本研究では、細胞の状態と組織形成の関係性を明らかにする新しい理論とシミュレーション手法を開発していくことを目指す。 前年度までに、細胞分化により同じ種類の細胞からなる領域がどのように形成されるかという問題に焦点を当て、細胞シミュレータのプロトタイプを開発した。まず、細胞分化と細胞間相互作用のモデル化をおこない、それを2次元格子モデルに落とし込んだ。ここでは、細胞の移動や増殖を考えず、単純に状態を変え分化に至るようなモデルにしている。 この技術を活用し、今年度は心筋梗塞後の心臓リモデリングを模倣した二次元セルオートマトンモデルを開発した。心筋梗塞は冠動脈の閉塞により生じ、急性期の適切な治療後も慢性心不全へと進行することが一般的で、これに伴う左室のサイズや形態の変化の理解は重要な課題である。このモデルでは、心筋梗塞直後に異なる細胞タイプへの遷移が設定され、細胞間の相互作用がその遷移を促進するかたちで表現された。具体的には、隣接する特定の細胞タイプが存在することによって、特定の細胞遷移が加速されるという仮定のもと、異なるパラメータでシミュレーションを実施した。解析の結果、細胞間相互作用は細胞タイプの遷移だけでなく、特定の細胞タイプの領域形成を促進することが観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究は、分子生物学的手法とコンピュータシミュレーションを統合することによって、細胞の振る舞いと組織レベルでの現象を結びつける理論の開発を目指しています。特に、心筋梗塞後の心臓リモデリングを模擬する二次元セルオートマトンモデルの開発し、細胞間相互作用が細胞の遷移と領域形成に及ぼす影響を明らかにすることができました。このモデルは、細胞レベルの詳細なデータを生体組織のダイナミクスに統合することに成功しており、実験的なデータとの比較からもモデルの妥当性が確認されています。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、マルチスケールシミュレーションの開発を進め、細胞レベルの詳細な情報を組織レベルの現象に統合することが重要です。具体的には、single-cell RNA-seqから得られるデータ等を用いて、セルオートマトンモデルをさらに精緻化し、未知のセンサープロテインの探索も含めた網羅的な解析を行うことで、細胞の領域形成の動的メカニズムの全体像を明らかにすることを目指します。
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Causes of Carryover |
今年度は、心臓細胞の基礎理論の検討とプログラム開発に注力したため、大きな予算消費がなかった。また、研究支援員を雇用して大規模解析を実施するのは次年度以降とした。この差額については、次年度以降の大規模解析を実施するための人件費・物品費として使用する予定である。
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