2021 Fiscal Year Research-status Report
Heat Transfer and Molecular Structure in the Crowded Environment of the Cell
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21K03487
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
冨樫 祐一 立命館大学, 生命科学部, 教授 (50456919)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 熱伝導 / 熱伝達 / 生体高分子 / 生体膜 / 超分子混雑 / 分子構造動態 / 分子動力学計算 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、混雑環境下における生体高分子の温度・熱に対する応答を分子動力学計算を用いて解析することにより、細胞内の分子環境が伝熱過程(熱伝導・熱伝達)に与える影響を明らかにすることを目的としている。1. 高分子混雑下での伝熱の様相(分子内・分子間での熱伝導・熱伝達や、配向・複合体形成などの影響)、2. 高分子自身の構造転移(熱・温度に依存した構造変化、相転移・相分離など)、の両者が対象であり、相互の関連を視野に入れつつ、現時点では別々に研究を進めている。 研究開始前の予備実験を基に、2021年度は、タンパク質(BSAなど)の濃厚溶液をモデルとして、系内に温度差のある状況での伝熱や構造変化を、全原子分子動力学計算により解析した。熱伝導率などに関してある程度の見積もりはできている一方で、境界条件によるアーティファクトの回避が課題となっている。単純に系の大きさを拡張すると計算量が増大するため、解析手法を工夫できないか検討している段階である。脂質2重膜モデルでの解析は次年度の課題となった。 一方で、2.に関して小課題として設定した、温度による構造変化の生理的意義が示唆されているタンパク分子での構造転移に対する混雑の影響の解析については、アミロイドβタンパク質での予備実験(混雑していない場合の、構造が完全には壊れない中間温度域での構造分布)が進んだ。これを基礎データとして、今後、混雑の影響を解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始当初に、研究代表者の異動に伴う機材移設・再設定の問題や、計算機部品の需給逼迫など調達の問題が生じ、立ち上げが予定より大幅に遅れた。年度後半に状況は改善したが、やや遅れが残っている。このほか、新型コロナウイルス感染症の影響により、共同研究や研究会開催に支障が残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究協力者(学生)の協力を得て、検討の対象とするモデル系を増やし、計画に掲げた小課題に順次取り組む。特に、2021年度はタンパク溶液での検討にとどまったため、脂質2重膜構造を含む場合を対象とする。基礎生物学研究所の実験グループなどとの共同研究を再開し、実験との比較を通じてモデル系や条件設定を見直しつつ解析を進める。
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Causes of Carryover |
計算機に当初想定していたGPUが搭載できず、次年度以降に追加することとした。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、共同研究や研究成果発表のための出張が減り、旅費などが想定より少なくなった。状況が改善しつつあるため、次年度以降に有効に活用して当初想定していた共同研究を進める。
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Research Products
(2 results)