2023 Fiscal Year Research-status Report
動的な臨界擬カシミア力によるソフトマターにおける構造形成の理論的研究
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21K03488
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
藪中 俊介 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 任期付研究員 (60749852)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 2元混合系 / 熱浸透効果 / 相分離現象 / 臨界現象 / 非摂動繰り込み群 |
Outline of Annual Research Achievements |
二成分流体において臨界点付近で相関長の増大により固体表面と接している際に形成される吸着層の厚さは増大する。本研究では、このような吸着層に温度勾配をかけた場合に、吸着層内部で力が発生流体の運動を駆動する。このような現象は一般に固液表面付近の詳細な理解が求められ、十分な研究が進んでいない。本研究では、粗視化モデルを用い温度勾配下での熱浸透効果の研究を継続し、詳細な数値計算データの収集、論文の作成投稿を行った。既に論文作成の過程でその方程式を解析することで、熱流により誘起される力の表式を導出しているが、従来の先行研究との比較、さらに臨界点近の二成分流体が上部臨界温度を持つか下部臨界温度を持つかに応じ、輸送の方向が異なることの物理的な解釈も行った さらに相転移現象の基礎理論である非摂動繰り込み群に関する研究も行った。O(N)模型において4重臨界現象に対応する固定点を考察し、固定点ポテンシャルの値はWilson-Fisher固定点のものに収束するものの、固定点ポテンシャルの2階以上の微分はある場の値において、Wilson-Fisher固定点のものに収束しないことを示した。固定点の周りの固有ベクトルを計算することで、この差異が2つの固定点の安定性の違いの原因であることを示した。また、オーダーパラメーターがより複雑な対称性を持つ場合にも固定点ポテンシャルが特異的な振る舞いを示すことがあり、そのような現象の研究を進めるための数値的なスキームの構築も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、温度勾配下での質量流の普遍的な振る舞いに関し当初計画で予定していた研究についての論文を完成させ、さらに非摂動繰り込み群によって相転移の基礎理論に関する研究を進めることができているため、 「おおむね順調に進展している。」と判断する
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き、温度勾配の下でのさまざまなソフトマターの運動を調べ、熱泳動現象への応用を目指す。また、自由エネルギーの係数に効果を繰り込んでいた揺らぎの効果を直接数値的に調べることも行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の収束後、海外出張を再開したものの、他プロジェクトの出張との兼ね合いにより、当初計画どおりに本補助事業に関する海外出張を行うことができなかったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、次年度分研究費と合わせて、研究成果発表や打合せのための海外出張に係る費用として使用する。
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