2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of force field considering hydrogen-bond directionality
Project/Area Number |
21K03489
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
苙口 友隆 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (90589821)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 蛋白質 / 構造アンサンブル / 分子力場 / 分子動力学シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、申請者が開発してきた多点電荷原子モデルを導入した分子力場を電荷分布と共有結合項の両方に関して最適化を行うことで、水素結合を正しく取り扱い、かつ生体分子構造に関する実験データを再現できる分子力場を開発することを目的としている。分子力場を検証できる実験データとして最適なものは、蛋白質の構造アンサンブルに関する情報を与えてくれるものである。そのような実験手法としては溶液X戦散乱(SAXS)やNMRがあるが、それらが与える構造アンサンブルの情報は低分解能もしくは部分的といった特徴がある。そのため、分子力場を用いた分子動力学(MD)シミュレーションと実験データを比較する際には、情報科学的手法を用いて両者を連携させ、構造アンサンブルの正しい情報を与える手法が必要である。 本年度は、ベイズ統計を用いた実験と計算の統合手法を開発し、実験情報を再現できる構造アンサンブルをMDシミュレーションの結果から得られることを可能にした。本手法では、MD計算によって得られた構造アンサンブルモデルが実験データを説明できる確率(尤度)を定義し、その尤度を最小化する定式化から得られる自己無撞着方程式を解くことで、実験データを再現できる構造アンサンブルをMDシミュレーションの結果から得られることを可能にする。SAXSとMDの連携に適用し、アデニン酸キナーゼやトランスフェリンといったマルチドメイン蛋白質の構造アンサンブルを可視化できるか、モデル計算を用いて検証した。さらに実際の実験SAXSデータを用いて、構造アンサンブルが得られることも示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したように、本年度は、実験情報を再現できる構造アンサンブルをMDシミュレーションの結果から得られることを可能にする手法を開発した。現在、手法の詳細をつめ、論文執筆作業を行っている。したがって、現時点では研究は順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に開発した手法を用いて、幾つかのモデル蛋白質系について実験SAXSデータを再現する構造アンサンブルを得る。得られた構造アンサンブルを分子力場の検証に用いる。 代表者が開発した分子力場は、アミノ酸側鎖の電荷パラメータに対しては最適化を行ったものの、主鎖の電荷パラメータに対しては、結晶構造解析データの整理が不十分であったため行っていない。アミノ酸主鎖は2次構造形成等、蛋白質の構造形成において重要な役割を果たすため、その電荷パラメータの決定も重要である。令和4年度は、結晶構造解析データを再整理することにより、アミノ酸主鎖に対して実験水和構造を構築し、それを用いてアミノ酸側鎖の電荷パラメータを決定する。また、電荷決定の計算プロトコルにおいては、真空中での量子化学計算から決めた静電ポテンシャルを用いたため、窒素原子に対する実験水和構造を一部再現することができなかった。今後、陰溶媒を用いた量子化学計算を電荷決定の計算プロトコルに採用することで、この問題についても改善を試みる。
|
Causes of Carryover |
購入物品(ディスクサーバー用のハードディスク)が残額に到達しなかったため。次年度請求金額と合わせて、学会発表の参加費・旅費、投稿論文の英文校閲等に使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)