2021 Fiscal Year Research-status Report
インライン型粘性測定システムを用いた反応過程の長期モニタリング法の開発
Project/Area Number |
21K03491
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
細田 真妃子 東京電機大学, 理工学部, 教授 (40366406)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 粘性 / 遠隔計測 / 粘度測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では申請者らが独自に開発した粘性測定法である電磁駆動回転(Electro Magnetically Spinning: 以下EMS)システムを、通常の粘度測定手法を用いることができない反応炉や貯蔵槽からのインラインサンプリング測定により、常時モニタリングするシステムを開発する。さらにこれにより微生物による発酵や熟成過程といった月から年といった時間の単位で進行する工業プロセスにおける液体粘性の連続計測に適用する。本研究では申請者が開発した遠隔駆動の粘性測定システムの利点を活かし、反応・貯蔵槽からチューブで外気に触れることなくサンプルを粘度センサー部に導入して測定後はこれを還流させるという粘性の常時モニタリングシステムとして完成させる。 本年度はシステムの基本構成として、試料容器から試料を抽出、輸送して粘性測定部に充填し、その後再び試料槽に戻す循環型の計測ラインを設計・製作した。液体試料の抽送にはケミカルポンプを使用し、計測セルとの循環ラインはテフロンチューブで構成する。計測セルは金属製で上部に取り付けた光学窓を通して粘性プローブの回転を検出する。これにより有機溶媒のような揮発性の試料についても漏洩なく粘性の連続モニタリングが可能であることを確認した。さらに、特に高精度測定が困難な低粘性試料を想定し、インライン環境に対応可能な回転子を設計、製作した。一般に回転型のプローブの場合、測定の誤差要因となる機械摩擦トルクは回転半径の2乗に比例するのに対し、粘性トルクはその4乗に比例する。このため従来に比べ半径が4倍となる40mmの回転子を作製し、純水の粘性を1%以上の精度で決定できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、耐薬品性に優れた循環型の粘性連続モニタイングシステムを設計・試作し、その能力を検証することができた。これとあわせて特に低粘性については従来からある商用機器の性能を凌ぐ回転プローブを開発した。これらの組み合わせによりさまざまな環境におけるレオロジーの連続計測が可能になる。以上の通り本研究は当初の計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は測定対象を拡張し、医用測定における回転子のディスポーザブル使用や、食品関係における毒性のない材料の選定等が要求される。これを想定して実用化が可能でかつ作製コストが適切な回転プローブならびに試料セルの設計、製作を進める。さらに作製されたセルを用いて、実際に粘性が時間変化すると期待される系に適用して粘性の連続モニタリングのデモンストレーション測定を行う。最も簡単なプロセスとしては、固体の状態で溶媒に投入された溶質が、攪拌により徐々に溶解してゆく過程であり、これは安全な物質を用いて実現することができる。ショ糖水溶液の粘性はその濃度に応じて純水の粘性(1 mPa s)からその数倍程度に変化する。本研究で用いるEMSシステムは純水の粘性を1%以上の精度で決定できるため、溶質濃度の変化による粘性測定を検出することは十分に可能である。
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Causes of Carryover |
当初の計画を進める過程で、極めて簡便な工夫により、粘性の測定精度を医薬的に向上させる回転子の着想を得た。通常、回転子半径を大きく取ると、必要な試料容積が増加するために好まれないが、インライン型測定のように大量の材料からのサンプリングを行う場合には試料の量は制約にはならない。これにより、低粘性試料であっても十分な精度で計測できることが確認された。この回転子は塗料や食品など不均一な液体を扱う分野においても幅広い活用が期待できる。このため半径の大きい回転プローブの最適化設計ならびに作製を優先するために消耗品材料の購入に予算を使用し、実際にこの回転子を用いての物性の連続測定を計画後半に行うこととした。今後の計画では将来的に純水程度の大きさの粘性を有する有機溶媒を対象として、耐薬品性・耐高温高圧の回転子の設計を進める。この方法で試料セルならびに粘性プローブを各種加工・製作するために次年度に70万円を使用する。
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