2021 Fiscal Year Research-status Report
高圧条件下における混合溶媒系の臨界普遍性と隠れた長距離相互作用の解明
Project/Area Number |
21K03494
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
貞包 浩一朗 同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (50585148)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 臨界現象 / 相分離 / 自己組織化 / ソフトマター / 液体 / 高圧力 / 中性子散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、4000気圧までの高圧条件下における混合溶液系の臨界普遍性の解明を目指している。その中で、(1)溶液のマイクロメートルスケールの構造の解明のため「光散乱」、(2)ナノメートルスケールの構造解明のために「小角中性子散乱実験」を行う必要がある。2021年度はこれらの準備と予備実験を行い、以下の成果を得た。 (1) 光散乱実験で使用可能な高圧装置の設計・製作 高圧条件下での溶液の物性をマイクロメートルの空間スケールで明らかにするする手法として、本研究計画ではレーザー光(波長532nm、強度500mW)を用いた「光散乱実験」を行う。ここでは液体に4000気圧の高圧力を与えつつ、液体内部にレーザービームを透過させる必要があるが、この目的に合致した装置は市販されていない。そこで2021年度は、高圧条件下での光散乱実験を行うための装置のデザイン(設計)を行った。ここでの設計案をもとに、圧力装置を取り扱うメーカーとして「竹田理化株式会社」「株式会社テクメイション」の2社に製作を依頼し、2022年2月10日までに全てのパーツが納品された。さらにい、これらのパーツを組み上げ動作確認を行ったところ、3000気圧の高圧条件までは機器が正しく動作することを確認した。 (2) 高圧環境下における小角中性子散乱実験 高圧環境下での溶液のナノ構造を観測するため、日本原子力研究開発機構(茨城県東海村)にて、小角中性子散乱実験を進めている。2021年度は、中性子散乱装置に組み込む高圧機器を用いて予備実験を行い、3000気圧までの高圧条件を達成することができた。下における溶液の構造を、1ナノメートル程度の分解能で観測することに成功した。2022年度も引き続き小角中性子散乱実験を行い、4000気圧までの高圧環境下における溶液のナノ構造の解明を目指す予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、日本原子力研究開発機構にて小角中性子散乱実験を行い、高圧条件下における溶液の臨界普遍性の観測を予定していた。テスト実験により、溶液に3000気圧までの高圧力を与えることに成功したものの、本番の実験(中性子ビームを照射する実験)の直前に、高圧機器の窓材(サファイア窓)に微細な傷が生じていることが確認された。この問題について、中性子散乱装置の担当者と協議を行い、安全性の観点から実験を取りやめることとなった。現在、装置のメーカー(竹田理化株式会社)に修理と安全確認を依頼しており、2022年度中に実験を再開させる予定であるが、当初の予定よりはやや遅れた状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、2021年度には光散乱実験で使用可能な高圧装置の製作が完了した。2022年度は、この装置を用い、高圧条件下における混合溶液系の臨界挙動について光散乱実験を行い明らかにする。また上記のように、現在小角中性子散乱装置に組み込むための圧力機器の修理と安全確認をメーカーに依頼しているが、こちらが完了した後、2021年度に中断した「高圧環境下での中性子散乱実験」を再開させる予定である。
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