2021 Fiscal Year Research-status Report
中性粒子の流体効果による中性音波とプラズマ波動の結合
Project/Area Number |
21K03501
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
寺坂 健一郎 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (50597127)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 部分電離プラズマ / 中性粒子 / 静電イオンサイクロトロン波 / レーザー誘起蛍光ドップラー分光法 / ECRプラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,部分電離プラズマ中の中性粒子の流体運動がプラズマ波動特性に与える影響を実験的に明らかにすることである.特に,中性粒子波動とプラズマ波動間の結合に焦点をあて,イオン音波やイオンサイクロトロン波によって中性粒子音波が励起されること,またその逆過程が存在することを実験的に実証することを目指す.部分電離プラズマに関する柔軟な実験が可能なHYPER-II 装置を用い,高精度な時間分解レーザー誘起蛍光ドップラー分光(TRLIF)による中性粒子音波の精密測定を行う.本申請は,光科学技術を駆使し,プラズマ状態-気体境界領域におけるプラズマの新しい物理的性質を見出す先駆的な研究である. 2021年度は研究の開始に伴い, (1)計測・波動励起に関する実験システムの構築, (2)静電イオンサイクロトロン波の伝播特性(分散関係)に対する中性粒子効果の理論的検証の2点に焦点をあてて研究を進めた. (1):プラズマに電位擾乱をもたらす励起グリッドをHYPER-II中に導入し, 磁場に垂直にイオン音波速度で伝播する信号を確認した. 定常プラズマ計測用に開発された従来のLIFシステムをベースに, 中性粒子効果の実験検証に向けたTRLIFシステムの開発を行い, 原理的に伝播の時間スケールでTRLIF法を適用できることを確認した. 一方で, 信号-ノイズ比の改善が課題であり, 本格的な実証実験に向けた計測上の課題も明らかになった. (2):波動励起システム・TRLIFシステムの開発と並行して, 中性粒子の運動効果を考慮した理論モデルを構築し, 波動場中の中性粒子の運動が実効的なイオンの質量の増加をもたらすことを明らかにした. また, イオンサイクロトロン周波数以下の周波数で伝播する静電イオンサイクロトロン波が存在し得るという新しい性質を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は, HYPER-II装置における波動励起システムのおよび時間分解LIFシステムの構築を行った. 研究全体の計画では, プラズマに擾乱を与える場合と中性粒子に擾乱を与える場合の両ケースに対して波動励起システムを搭載する予定であるが, 本年度はプラズマに擾乱を与えて波動を励起するシステムの構築について実際の伝播性信号の確認まで進めることが出来た. 中性粒子の動的振る舞いを実験的に明らかにするためのTRLIFシステムについても, 10kHzまでの周波数帯で速度分布関数が計測できるシステムを構築した. 計画では, 条件付き平均化法もしくはサンプル・ホールド法によって信号・ノイズ比を確保する予定である. 本年度は, 条件付き平均化法とロックイン検出を組み合わせたシステムを用いて, 定常プラズマを対象とした中性粒子の速度分布関数の再構成が可能であることを実験的に確認した. サンプル・ホールド法を適用するか否かについては, 実際の波動励起実験における信号・ノイズ比を鑑みて適宜判断し, 高精度な計測を行う予定である. 静電イオンサイクロトロン波に対する中性粒子の運動の効果の理論モデルから, HYPER-IIでの実験条件や, 検証すべきパラメーターなど実験検証に関する検討を行った. HYPER-IIにおける従来の実験よりも高ガス圧力条件での実験が必要であることが明らかにした. 理論検討の部分に関する結果については学術雑誌 (Physics of Plasmas) に掲載され, 本研究の重要性を示す成果を得ることが出来た. 進捗条件に関する初年度の総括として, 当初計画していた実験設備の整備および理論的な検討を効率的に進めることが出来ていると言え, 本研究は当初の計画通りおおむね順調に進められていると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は静電イオンサイクロトロン波の伝播特性に対する中性粒子の運動の効果に関する実験検証を本格的にスタートさせる予定である. 2021年度に開発した波動励起システムおよびTRLIFシステムを用い, 静電イオンサイクロトロン波中の中性粒子挙動を速度空間の階層から調べる予定である. 実験において生じる可能性のあるTRLIF計測上の問題 (例えば信号・ノイズ比の改善や分布計測上の問題) については, サンプル・ホールド法の導入や受光計の増設などを適宜行う. また, 2021年度の構築した理論モデルを参考に, 装置の幾何学形状を有効に使える斜め伝播やイオン音波を用いた検証など, より顕著に中性粒子効果を見込むことが出来るプラズマ条件を検討して実験へのフィードバックを行うことで, 効率的に研究を進める予定である. また, 当初の計画通り中性流体 (中性ガス) に擾乱を与えた場合 (中性音波を励起した場合) のプラズマの応答を調べるための励起システムの開発も並行して行う予定である.
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Research Products
(11 results)