2022 Fiscal Year Research-status Report
高出力パルスマグネトロンスパッタリングの成膜領域における新規イオン密度分光計測法
Project/Area Number |
21K03503
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Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
實方 真臣 東京工芸大学, 工学部, 准教授 (80277368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
美齊津 文典 東北大学, 理学研究科, 教授 (20219611)
西宮 信夫 東京工芸大学, 工学部, 教授 (50208211)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マグネトロンスパッタリング / プラズマ診断 / プラズマ分光計測 / 光イオン化レーザー分光法 / 飛行時間型質量分析法 / レーザー誘起蛍光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の直流マグネトロンスパッタリング(DCMS)に比べ、スパッタ粒子のイオン化率の高い高出力パルスマグネトロンスパッタリング(HPPMS)では、高い平滑性・潤滑性・密着性を有するコーティング面の形成が可能となる。その一方で、HPPMSは、低デューティー比の電力パルスを用いるため、スパッタ粒子の絶対的な生成量はDCMSに比べて少ない。さらに、高いイオン化率で生成したスパッタ粒子イオンのうちの最大およそ80%がカソードであるターゲット方向への引き戻し効果(Back-attraction effect)を受けることで、さらに成膜速度が低く抑えられてしまう。このように、HPPMSには成膜生産技術として不利な一面を有することも知られている。したがって、HPPMSの制御・評価において、イオン化率およびイオン密度の把握は欠かすことはできない。本研究では、2光子共鳴レーザー光イオン化飛行時間質量分析法による新たなプラズマ診断法を開発し、HPPMSで生成するスパッタ粒子イオンの成膜領域におけるイオン密度を精密に計測することを目的とする。令和4年度における本研究の研究実施状況を以下に示す。 (1)光イオン化光源の準備:2光子共鳴飽和レーザーイオン化法のための飽和励起レーザー光源の準備および調整を行った。Nd:YAGレーザー励起色素レーザーを光源とするレーザー誘起蛍光法によって、スパッタTi中性粒子の共鳴原子線を決定する方法を確立した。 (2)スパッタリング源の準備:電力パルスON時間、OFF時間に両方に対して、スパッタリングプラズマのイオン密度を計測するのに最適と思われるスパッタリング駆動方式として、深振動パルスマグネトロンスパッタリング(DOMS)法の開発を行うとともに、そのプラズマ発光分光計測を行ない、DOMSプラズマ形成におけるパルスステップごとの時間発展過程を解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Tiターゲットに対するHPPMS(DOMS)で生成するTi粒子の2光子共鳴実験のためのレーザー光源の準備、および2光子共鳴光イオン化実験の準備を行っている。今年度は、Nd:YAGレーザー励起色素レーザーを光源とするレーザー誘起蛍光法(LIF)を用いたスパッタTi粒子の共鳴原子線を決定する方法を確立した。また、LIF過程とイオン化過程とでは異なる遷移特性(遷移確率、遷移速度)を持つ。したがって、両者の観測条件をバランスよく満たすようにTiの共鳴原子線を選定することが、2光子共鳴レーザー光イオン化法によるプラズマ診断法を実現する上で最も重要な課題となる。さらに、飛行時間質量分析計を用いた2光子共鳴レーザー光イオン化実験では、Tiの共鳴原子線の励起レーザー光とTiイオン化レーザー光を飛行時間質量分析計の目視不可能な加速電極中心で時間的・空間的精密に重ね合わせて対向させる集光光学系が必要となる。このように加速電極中心領域で、ナノ秒パルスレーザー光を精密に集光交差させるための工夫を凝らしながら準備を進めている。例えば、レーザーの焦点を正確に決定するために、ターゲット位置に設置したSi薄片にレーザーが照射された際に発するパルス音量を集音器で測定する集光光路調整法の開発を行った。また、本研究では1光子目の共鳴遷移で飽和励起させることによって粒子密度を計測するため、飽和励起させるためのレーザー光のパワー密度を正確に測定する必要がある。そのためには、レーザービーム径を精密に計測することが重要である。そこで、そのための高精密マイクロメータヘッドを用いたナイフエッジ駆動法によるビーム径計測システムの開発を行った。 全体としては、コロナ感染拡大の状況を様子見しながら研究分担者および協力研究者と共同研究を進めざるをえなかったため共同研究の作業時間を十分に確保できず、その分、進捗にやや遅れを生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の前半で、まずスパッタ粒子のイオン密度を計測にとって最適なTiの共鳴原子線の見極めを行う。それと同時に、飛行時間型質量分析計の加速領域(成膜領域に相当)における2色2光子共鳴光イオン化のレーザー集光光学系の組み上げを、および開発中のレーザー光のパワー密度計測のための精密レーザービーム径測定器を完成させる。 今年度の後半で、スパッタTi粒子に対して、2波長2光子共鳴飽和光イオン化レーザー分光法を行い、スパッタTi粒子の密度計測法を確立する。次に、スパッタTi粒子イオンの共鳴原子線を選定し、Ne:YAGレーザーの9倍波発生によるVUVレーザー光をイオン化光源とする2波長2光子共鳴飽和光イオン化レーザー分光法を行い、スパッタ中性粒子Tiの粒子密度との相対比より、スパッタイオン化粒子Ti+の粒子密度を計測し、本研究の目的とする飛行時間型質量分析計を用いた2波長2光子共鳴飽和光イオン化レーザー分光法によるイオン粒子の絶対密度計測法を確立する予定である。
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Causes of Carryover |
令和3年度と同様に、令和4年度もコロナ感染拡大の状況を様子見しながら、研究分担者および協力研究者と共同研究を進めざるをえなかった。共同研究のための作業時間を十分に確保できず、その未実施分にかかる費用が主となり次年度使用額を発生させた。
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Research Products
(19 results)
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[Presentation] 間欠型深振動マグネトロンスパッタリングの放電パルス設計とプラズマ分光計測2023
Author(s)
横山 英佐, 永井 友樹, 筒井 海太, 西宮 信夫, 實方 真臣, 戸名 正英, 山本 宏晃, 塚本 恵三, 冨宅 喜代一, 大下 慶次郎, 美齊津 文典
Organizer
第70回応用物理学会春季学術講演会
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[Presentation] 深振動マグネトロンスパッタリングのパルス設計とプラズマ発光分光計測2022
Author(s)
横山 英佐, 永井 友樹, 筒井 海太, 西宮 信夫, 實方 真臣, 戸名 正英, 山本 宏晃, 塚本 恵三, 冨宅 喜代一, 大下 慶次郎, 美齊津 文典
Organizer
第83回応用物理学会秋季学術講演会
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