2021 Fiscal Year Research-status Report
運動論的MHDシミュレーションで探求するヘリカルプラズマのベータ値限界
Project/Area Number |
21K03516
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
佐藤 雅彦 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (80455211)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | MHD不安定性 / 運動論的効果 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
大型ヘリカル装置(LHD)では、体積平均ベータ値が約5%の安定な高ベータプラズマが得られている。ここでベータ(β)値は、磁気圧に対するプラズマ圧力の比である。先行研究による高ベータLHDプラズマに対する運動論的MHDシミュレーションでは、ヘリカルリップルに捕捉された熱イオンが、圧力勾配駆動型MHD不安定性を抑制する効果を有し、高ベータ状態を維持する上で重要な役割をすることが示されている。この先行研究の解析で用いられたMHD平衡の中心ベータ値はβ_0=7.5%で、その磁気軸は、LHD実験で得られている高ベータプラズマの磁気軸よりも外側に位置する。本研究課題では、実験により即した平衡に対する解析を目的として、LHD実験で得られた体積平均ベータ値が4.8%のプラズマと同じ位置に磁気軸を持つ平衡(β_0=6.3%)に対して解析を行った。その結果、β_0=7.5%の場合と同様に、最も不安定なモードは(m,n)=(3,2)のインターチェンジモードであり、MHDモデルの場合と比較して成長率は約1/10に低下すること、および、非線形状態における不安定性の影響はプラズマ周辺部に限定され、中心の高ベータ領域が維持される結果が得られた。ここで、m,、nはポロイダルモード数、トロイダルモード数である。一方、シミュレーションから得られた最終的なモード構造を比較すると、最も振幅の大きいモードがβ値に依存することがわかった。β=7.5%においては(m,n)=(1,1)モードが支配的なモードであったが、β=6.3%においては、一時的に(m,n)=(1,1)モードが支配的なモードになるものの、最終的には(m,n)=(2,2)モードが支配的なモードになる。最終的に得られるモード構造の形成メカニズム、および、そのβ値に対する依存性の詳細な解析を今後進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度においては、圧力勾配駆動型MHD不安定性に対する熱イオンの運動論的効果のベータ値依存性の解析を行なった。LHD実験結果と同様に、シミュレーションにおいても高ベータプラズマが維持される結果が得られたが、一方で、シミュレーションで得られた不安定モードのモード数と、実験で観測されるモード数に違いが見られる。実験結果、シミュレーション結果ともに、(m,n)=(1,1)モードは見られているものの、シミュレーションで見られた(m,n)=(3,2)モードは実験では観測されていない。今後は、不安定モードのモード数に対しても実験結果を再現するように、計算モデルの改良を進めていく。本年度では、反磁性ドリフト効果も含めた解析も実施する予定であったが、反磁性ドリフト効果を加えた計算を行うと、パラメータ領域によっては数値的な不安定性が現れ、十分な解析を行うことができなかった。そのため、当初の予定よりも計画がやや遅れている。数値的な問題を早急に解決し、次年度において反磁性ドリフト効果の影響を調べる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は下記の課題について研究を進めていく。 ・反磁性ドリフト効果を含めた運動論的MHDシミュレーションを実施し、圧力勾配駆動型MHD不安定性の線形成長率、および、飽和レベルに対する反磁性ドリフト効果を明らかにする。 ・平衡におけるイオンの軌道面は、実際には磁気面と一致せず、MHDモデルに基づく平衡は近似的な平衡である。解析の高精度化のために、運動論的MHDモデルに基づいた平衡コードを新たに開発する。これにより、イオン温度が高く、イオンの軌道面が磁気面よりも大きくずれる状況に対しても正しい解析が可能とさせる。 ・様々な実験パラメータに対して運動論的MHD平衡を構築して、シミュレーション解析を実施することで、イオンの運動論的効果が及ぼす影響を明らかにする。シミュレーション結果と実験結果との詳細な比較・検証から、運動論的MHDモデルの適用可能範囲を明らかにするとともに、必要となる物理モデルの改良についても検討を行なっていく。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染症の拡大により、出張予定であった国際学会がオンライン開催に変更されたため、旅費の支出がなかったため余剰金が発生した。この余剰金は、次年度の解析用計算機の購入に使用する。
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