2022 Fiscal Year Research-status Report
運動論的MHDシミュレーションで探求するヘリカルプラズマのベータ値限界
Project/Area Number |
21K03516
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
佐藤 雅彦 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (80455211)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 運動論的MHD / 圧力駆動型MHD不安定性 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
大型ヘリカル装置(LHD)においては、圧力勾配駆動型MHD不安定性の影響を大きく受けることなく、体積平均ベータ値が約5%の安定なプラズマが得られている。これまでの熱イオンの運動論的効果を考慮した運動論的MHDシミュレーション解析から、ヘリカルリップルに捕捉された熱イオンの歳差ドリフト運動により、MHD不安定性の飽和レベルが抑制されることが示されている。先のシミュレーション解析では、イオンは熱イオンのみを考慮し、高速イオンの効果は無視されていた。しかしながら、実際の高ベータLHD実験においては、中性粒子ビーム加熱が行われていることから、高速イオンの影響も考慮に入れ、そのMHD不安定性に対する影響を評価する必要がある。そこで本年度においては、熱イオンの運動論的効果に加え、高速イオンの運動論的効果も考慮して解析を行なった。本研究で用いた計算モデルでは、電子を流体モデルにより取り扱い、熱イオンと高速イオンはドリフト運動論モデルで取り扱っている。解析においては、中心ベータ値が7.5%の高ベータLHD平衡に対して行い、初期平衡における電子の圧力と熱イオンの圧力は等しいと仮定した。このもとで、高速イオン寄与分の中心ベータ値を0%から0.8%の範囲で変化させて、MHD不安定性に対する高速イオンの影響を調べた。高速イオンの初期分布は、簡単のために温度が100keVのMaxwell分布を仮定している。磁気レイノルズ数を10^7とし、最も不安定なn=2の抵抗性インターチェンジモードの線形成長率と高速イオン寄与分のベータ値との関係をシミュレーションにより解析した。ここで、nはトロイダルモード数である。その結果、高速イオン寄与分のベータ値が増加するにつれて線形成長率は低下することがわかった。これは、高速イオン寄与分のベータ値が増加するにつれ、不安定性の主要な駆動源となっている電子圧力が減少することによるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度においては、高速イオンの運動論的効果を含めて、圧力駆動型MHD不安定性の線形安定性解析を実施した。圧力駆動型MHD不安定性の非線形飽和状態に対する高速イオンの影響の解析については、シミュレーションの計算時間の関係から本年度までには完了することができなかったため、現在の進捗状況は当初の計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
熱イオン、高速イオンの両方の運動論的効果を含めた運動論的MHDシミュレーションにより、非線形飽和状態に対する高速イオンの運動論的効果の影響を明らかにする。そして、様々なLHD平衡に対するシミュレーション解析を実施することにより、圧力駆動型MHD不安定性の飽和レベルと、平衡のベータ値、圧力分布形状、磁場配位との関係を明らかにする。また、シミュレーション結果と実験結果との詳細な比較・検証から、運動論的MHDモデルの適用可能範囲を明らかにするとともに、必要となる物理モデルの改良についての検討も行なっていく。
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Causes of Carryover |
出張予定であった海外で開催されるワークショップを、コロナウィルス感染症の拡大の理由からオンラインによる出席に変更した。そのため、海外旅費の支出が発生せず余剰金が発生した。余剰金は次年度の旅費として使用する。
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