2022 Fiscal Year Research-status Report
大気圧プラズマによる抗腫瘍効果と免疫賦活化を利用した新規口腔がん治療法の開発
Project/Area Number |
21K03524
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
山下 佳雄 佐賀大学, 医学部, 教授 (50322300)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
合島 怜央奈 佐賀大学, 医学部, 講師 (30756143)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 大気圧プラズマ / 扁平上皮癌 / 免疫細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、in vitroにおける大気圧プラズマの影響を様々は細胞を用いて検証実験を行った。令和4年度に関しては各種の腫瘍細胞に加え、さらに免疫系細胞への大気圧プラズマの影響に関して実験を進めた。実験計画通り、まずは既存のcell line(B細胞系、T細胞系など)を用いプラズマの影響を確認した。すでに予備実験にてその細胞活性が上昇することが判明していたことから、最適な照射条件設定の検証から行った。細胞腫により、ややプラズマ照射に対する反応が異なることが判明した。現在それがcell lineの起源となった臓器由来なのか、細胞特有の現象によるものかを検討始めたところである。一方で、正常のB、T細胞としてマウスの造血系細胞(Spleen,Thymus,Lymph node, Bone marrow)を採取し、同様の実験を行った。結果、これら細胞においても、まず条件設定が必要で、腫瘍細胞での条件とは異なる傾向にあった。これは正常上皮細胞株(HaCaT)において認められた現象にも類似しており、細胞膜の形状の違いがプラズマの影響に反映されるのではないかと推測している。 臨床使用(口腔内)を視野に、大気圧プラズマ装置の開発を進めた。様々な先端構造のプラズマ照射用のトーチを九州大学の林研究室と共同で作製し、その精度検証を行った。つまり実用化のために、長時間の安定作動の確認、プラズマ照射線量の最適化、電磁波適合性等の検証を行いながら改良を進めた。しかしまだプロトタイプと呼べる装置の開発にはいたっていない。安定したプラズマ発生を維持することは、容易ではなく予定以上に時間を要している。 前年度予定していたin vivo実験も開始した。人工的にマウス背側皮下への腫瘍塊作製を試みるも、安定した結果が得られなかったため、マウス舌への腫瘍塊作製へ変更しプラズマ照射の影響を病理学的標本を作製し検討している。まだn数が集まっておらず、今後も継続してn数を増やしていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
使用するプラズマ照射用のトーチの開発には、九州大学工学部の林研究と共同にて行った。プラズマ生成に際しては高い熱産生があるため、照射される細胞に熱の影響が大きく生じるため、様々な冷却装置を付与することで、熱影響を排除する必要があった。また一方で、プラズマ産生時の副産物としての窒素酸化物が細胞毒性をもつため、その対応として放電電極を誘導体でコーティングすることにより、発生する電子のエネルギーを低下させ有害な窒素酸化物の発生を抑制し、活性酸素のみを効率的に生成する方法を用いた。トーチの形状が変わるごとに、これらの問題点を解決しなくてはならなかった。また一方で、トーチごとに照射条件が変わるため各細胞種ごとに、同様の検討を行う必要があった。
in vivo実験においては、マウス背側皮下への腫瘍塊を誘導し、そこへ動物実験用のトーチで大気圧プラズマを照射し、その影響を検討する予定であったが、予想に反して期待する腫瘍塊が安定してできず、時間を要した。途中からマウス舌への腫瘍局注によりある程度の供給が可能となったため、実験系を変更することを余儀なくされた。
プラズマ装置、さらには各種細胞によって条件が変わるため、その都度に条件設定の基礎実験が必要となり、予定より時間を要している。同様に、動物実験においては、細胞レベルと異なり照射量(時間)も異なっている。これに伴い発生する熱の影響、産生される窒素酸化物の影響も考慮した上での、抗腫瘍効果を評価しなくてはならず、この点に関して非常に苦心しているのが現状である。
|
Strategy for Future Research Activity |
実験計画にあげている免疫チェックポイント阻害剤との併用実験に関しては、まだほとんど着手できていない。予備実験として、口腔がん治療に一般的に用いられてるプラチナ系抗がん剤(CDDP、5Fuなど)、あるいは分子標的薬(C-mabなど)に対する腫瘍細胞への反応実験を進んでいる。まずは安定したプラズマ装置を確立し、その装置における各種細胞への最適条件を決定した後に、in vitro, in vivoの両面から殺腫瘍治療薬との併用効果、免疫チェックポイント阻害剤との併用効果に関する検討を進めていく。 一方で、正常の免疫系細胞への詳細な影響がまだ解明されていない。マウスを用いた動物実験において、B細胞、T細胞とエンリッチした状態での影響を明確に行う。必要に応じてその他、免疫系細胞に対する反応も確認していく。並行してヒト末梢血から同様に免疫系細胞を回収し、同様に大気圧プラズマの影響を検討する。当初の計画ではClinical studyもあげていたが、まずは以上の基礎データを集める。また引き続き、臨床使用に対応可能な装置の開発も継続して進める予定である。
|
Causes of Carryover |
実験計画の遅れを生じており、計画する実験内容を考慮し次年度での使用へと計画を変更した。
|