2021 Fiscal Year Research-status Report
大気圧ラジカル支援ミストCVDによる酸窒化亜鉛薄膜の合成とラジカル反応機序の解明
Project/Area Number |
21K03526
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
竹田 圭吾 名城大学, 理工学部, 准教授 (00377863)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大気圧プラズマ / 化学気相堆積 / 酸窒化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アンモニア系ラジカル種の生成・供給を可能とする大気圧ラジカル源をミスト化学気相堆積(CVD)に組み合わせ、従来のミストCVDでは困難であった金属酸窒化薄膜の低温合成を実現することを目的としている。研究開始の初年度は、低温プラズマ装置を用いて大気圧ラジカル源を実現するとともに、それをミストCVDに組み込んだラジカル支援ミストCVD装置の構築に取り組んだ。 まず、大気圧ラジカル源の実現に向けて、AC高電圧電源により駆動する大気圧プラズマ装置を構築し、放電ガスとして窒素ガスに水素ガスを数%程度添加した混合ガスを用いた大気圧プラズマの発光分光計測を実施することで、アンモニア系ラジカルの生成の可能性を考察した。その結果、水素ガスの混合比率を数%程度から低下させていくと、波長336.1nm付近に観測されるNHラジカルの発光強度が徐々に増加し、水素ガス混合比率を1%付近において、その発光強度が最も高くなる傾向がみられた。これは低混合比率の条件下においてNHラジカルが比較的多く生成されることを示す結果であるとともに、水素ガスの導入量の変化によりNHラジカルの供給量を制御できる可能性を示唆するものである。今後、生成されるラジカル種の更なる詳細な分析は必要とするものの、以上の結果よりアンモニア系ラジカル源としての本装置の可能性を十分に確認することができた。 次に、ミストCVDにより合成した酸化亜鉛(ZnO)膜に対して、上記プラズマで生成した活性種を照射した結果、水素ガス混合比率1%の条件下において、ZnO膜の膜厚の減少がみられた。これはZnO膜がエッチングされた結果であるが、エッチング反応と窒化反応はプラズマから供給される各ラジカル種による競合反応であると考えており、今後更なるプロセスおよびラジカル生成条件の最適化によりZnOの窒化も十分可能であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、アンモニア系ラジカル種の生成・供給を可能とする大気圧ラジカル源をミスト化学気相堆積(CVD)に組み合わせたラジカル支援ミストCVDを構築し、金属酸窒化薄膜の低温合成を実現することを目的としている。研究初年度は主に、大気圧ラジカル源の実現のための大気圧プラズマ装置の構築とアンモニア系ラジカル生成の条件探索を行うとともに、実際にミストCVDで合成したZnO膜への影響を調査した。その結果、放電ガスとして窒素ガスに水素ガスを数%程度添加した混合ガスを用いた条件下において、NHラジカルの生成を確認するとともに、ガス混合比率を最適化することによって、NHラジカルの生成量を制御できる可能性を見出すことに成功している。また、実現したNH系ラジカル供給を可能とする大気圧ラジカル源をミストCVDに組み込み、ラジカル支援ミストCVD装置を構築するとともに、ミストCVDで合成したZnO薄膜に対するラジカル照射の効果を評価することに成功している。現状において、窒化反応ではなくZnO薄膜がエッチングされる反応が確認されているが、エッチング反応と窒化反応はプラズマから供給される各ラジカル種による競合反応であると考えており、今後更なるプロセスおよびラジカル生成条件の最適化によりZnOの窒化も十分可能であると考えている。以上のように、初年度の目標であった、水素と窒素の混合ガスを用いた大気圧プラズマをベースとしたアンモニア系ラジカル源の構築とそのミストCVD装置への組み込みは達成できており、おおむね順調に研究は進行しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では研究を遂行していくうえでのベースとなる、水素と窒素の混合ガスを用いた大気圧プラズマをベースとしたアンモニア系ラジカル源を備えたミストCVD装置の実現に成功している。今後はまず、1)ラジカル計測技術を基にした構築した大気圧ラジカル源の最適化による供給ラジカルの種類とフラックスの制御、2)ZnO薄膜におけるラジカル表面反応の分析、の2つの課題に分けて研究を推進していく。1)に関しては、窒素と水素ガスの混合比、プラズマ生成に用いる電源の周波数などに対する、N原子またはNHxラジカルの密度変化を、発光分光やレーザー分光などの各種分光計測技術を用いて計測し、装置の最適化と行うとともにフラックス量の制御方法を確立する。そして2)において、ラジカル種およびそのフラックスを変化させながらミストCVD中のZnO薄膜や合成後のZnO薄膜に照射し、その薄膜表面で起こる各種ラジカルによる反応や膜質への影響を電子顕微鏡やX線分析など通じて解析する。以上の研究を通じて、まずはラジカル源から供給される各ラジカル種による表面反応を理解し、最適なラジカル種の特定とそのフラックス量の最適化を試みる。そして次の段階として、各種分光技術を駆使したラジカル種のミスト原料との気相反応の計測にもチャレンジするとともに、ラジカル種のミストCVD反応場への供給が引き起こす膜合成への影響を解析することで、ラジカル支援によるミストCVD技術の学術的な知見を蓄積し、本技術の基盤を構築する。
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Research Products
(1 results)