2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidating real-time dynamics using tensor networks
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21K03531
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
武田 真滋 金沢大学, 数物科学系, 教授 (60577881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加堂 大輔 同志社大学, 理工学部, 准教授 (90447219)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | テンソルネットワーク / 乱数 / スペクトルスコピー |
Outline of Annual Research Achievements |
実時間経路積分をテンソルネットワーク計算で評価する中で計算精度のボトルネックとなるのは粗視化の際に生じる近似誤差である。そこで、今年度はこの問題に取り組み、乱数と特異値分解を組み合わせた新しい粗視化アルゴリズムを開発した。従来型のアルゴリズムでは情報圧縮を実現するために打ち切り特異値分解が採用されていた。しかし、その打ち切りによって系統誤差が生じ、しかも、粗視化プロセスを繰り返し行うことで系統誤差がより複雑になり、 最終的な誤差評価が難しくなるという問題があった。 この問題を解決するために確率的手法と組み合わせることで系統誤差を完全に除去する方法が提案されてはいたものの、その反動として生じる統計誤差の制御が難しく、これまで成功した例は知られていなかった。 そこで本研究では、素粒子物理学の格子QCDの分野でよく用いられるノイズ法と呼ばれる乱数を使って逆行列を効率的に計算する手法をテンソルの分解圧縮計算に適用した。その結果、2次元イジング模型の自由エネルギーの計算精度が従来法に比べて数桁ほど改善することを確認した。 本年はその他にも、テンソルネットワーク法によって模型のスペクトルスコピーを行う計算スキームを新しく提唱した。従来型のモンテカルロ法ではエネルギー固有値を取り出す際に、時間方向の格子サイズが有限であることから起因する系統誤差の制御が難しいという問題があった。しかし、今回提唱した新しいスキームによってそれを完全に除去することに成功した。実証実験として、同スキームを2次元イジングモデルに実装し、対応する厳密解と照らし合わせることでその正当性と実用性を確認した。今後は、より複雑な模型でのスペクトルスコピーを行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粗視化アルゴリズムの開発も一定の目処が立ち、今後、より高精度な実時間経路積分の評価に移行することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回新しく開発した粗視化アルゴリズムを1+1次元実スカラー場理論の実時間経路積分の評価に組み込む予定である。それによって、より高精度な結果をえられると期待できる。
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Causes of Carryover |
(理由)本年度に生じた残金は有意義な使用を行うには半端な金額となったため、次年度の助成金と合わせて使用することにより、より有効な使用計画が可能と なると判断した。 (使用計画)次年度に請求している助成金と合わせて、研究成果発表のための旅費や、学外から招聘する講師によるセミナー等を通じた専門知識の提供に対する 謝金として使用する予定である。これらを通して研究が最も効率的に推進できるように、研究費の使用については最大限の配慮を行う。
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