2021 Fiscal Year Research-status Report
解析および数値的手法による超弦の行列模型から創発される時空の研究
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21K03532
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
土屋 麻人 静岡大学, 理学部, 教授 (20294150)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超弦理論 / 行列模型 / 創発される時空 / ゲージ重力対応 / 標的空間エンタングルメントエントロピー / テンソルくりこみ群 |
Outline of Annual Research Achievements |
IIB行列模型は超弦理論の非摂動論的定式化を与えると期待されている。この模型においては、時空はアプリオリには存在せず、行列の自由度から創発される。ここでは、この模型の数値シミュレーションを行い、9次元空間の回転対称性が自発的に破れた滑らかな時空が出現している相を発見した。一方、超弦理論は重力を含むため、超弦理論の非摂動論的定式化として行列模型を完成させるには、行列によって 幾何がどのように記述されるのかを明らかにしなければならない。ゲージ重力対応においても空間が創発されるが、ゲージ理論からいかに重力側のバルク幾何が再構成されるかを明らかにすることが課題となっており、これを明らかにすることで行列模型による幾何の記述への知見が得られると考えられる。これに関連して、ここではバブリング幾何と関連するN=4超対称ヤン・ミルズ理論のカイラルプライマリーセクターを記述する複素行列模型における標的空間エンタングルメントエントロピーを研究した。この行列模型の標的空間は複素行列の固有値が分布する2次元平面であり、固有値分布はフェルミオンが作る液滴とみなせる。この液滴はバブリング幾何では、超重力理論のhalf-BPS解の境界条件を定めるものに同一視される。ここで、2次元平面上の領域のエンタングルメントエントロピーを求め、さらにこの領域の境界の長さをバブリング幾何において求めて、両者は定性的に一致することを示した。この結果は、ゲージ重力対応において、標的空間エンタングルメントエントロピーが、バルクにおけるエンタングルメントエントロピーを表し、バルクの幾何で記述されることを示唆する。また、ゲージ重力対応においてゲージ理論から得られるテンソルネットワークによるバルク幾何の再構成を具現するための一歩として、3次元ゲージ理論に対するテンソルくりこみ群による解析に初めて成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
由 IIB行列模型の数値シミュレーションを複素ランジュバン法を用いて実行し、9次元の回転対称性が破れた新しい相の発展など大きな進展が得られた。また、ゲージ重力対応における標的空間エンタングルメントエントロピーとバルクの幾何の関係の研究によって、行列模型における曲がった時空の記述についての研究も進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
次の三つの課題に取り組む。1)IIB行列模型の複素ランジュバン法を用いたシミュレーションを、並列計算を用いてより大きな行列サイズで推進する。これにより、宇宙初期の時空の構造の解明を目指す。2)コヒーレント状態法とBerezin-Toeplitz量子化の関係の研究を発展させ、行列模型における曲がった時空の記述の仕方を明らかにし、超弦理論を非摂動論的に定義する行列模型を完成を目指す。3)ゲージ重力対応において、ゲージ理論から得られるテンソルネットワークによるバルク幾何の再構成を具現する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響で国内および海外出張ができなかったためである。2022年度は、研究成果発表のための旅費に使用予定である。
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