2023 Fiscal Year Annual Research Report
中間子原子核に反映される有限密度における対称性の効果
Project/Area Number |
21K03536
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
永廣 秀子 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (10397838)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中間子原子核 / 結合チャネル / 擬スカラー中間子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は強い相互作用により支配されるハドロンの複雑な質量スペクトルやその相互作用を、対称性を手がかりとして統一的に理解することを最終的な目的として、イータおよびイータプライム中間子原子核束縛状態の実験的検証に向けた理論研究を行った。その目的のため、イータとイータプライムを含むカイラル模型をベースとして、結合チャネル法を用いて擬スカラー中間子とバリオンの散乱を記述できる枠組みを構成した。これらの模型について、クォーク模型からも検証を行い、擬スカラー中間子とバリオンの相互作用についてストレンジクォークを3つ含む系について、イータ中間子の重要性についても議論を行った。 これらの模型をイータ中間子と核子の系に適用し、ベースとするカイラル模型について、NLOまでの拡張を行い、さらにベクトル中間子の寄与を取り入れた。この模型を用いて、既知の散乱実験データと比較することにより、未知のイータプイラムと核子の結合定数の決定可能性について議論をおこなった。また本模型を用いて、イータプライムと原子核の間のポテンシャルの導出を行い、このポテンシャルが強いエネルギー依存性を持ち得ることを示した。またこの強いエネルギー依存性により、従来予想されていたエネルギー範囲より低い領域で束縛状態が存在する可能性を示した。これは、過去の実験において予想されたピークが観測されなかった一つの理由となりえると考える。また、その強いエネルギー依存性のため、束縛状態のレベル間隔が密となり、互いに独立したピークとならない可能性も示した。
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