2023 Fiscal Year Research-status Report
巡回ライプニッツ則を使った格子超対称性の構築とテンソルネットワーク計算
Project/Area Number |
21K03537
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
宗 博人 愛媛大学, 理学部, 研究員 (20196992)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 光裕 東京大学, 大学院総合文化研究科, 名誉教授 (80185876)
坂本 眞人 神戸大学, 理学研究科, 理学研究科研究員 (30183817)
加堂 大輔 同志社大学, 理工学部, 准教授 (90447219)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 格子場の理論 / ライプニッツ則 / 確率過程量子化 / 超対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の研究において、主に以下の二つの研究結果を得た。 (1)二次元を含む巡回ライプニッツ則(高次元CLR)の格子上の局所的な実現は難しいことがわかりつつあるが、これは意外な結果であった。というのは、一次元での巡回ライプニッツ則(1DCLR)を局所的に実現できることは我々によって具体的に示されており、その1DCLRを直積的に構成すれば高次元CLRが実現できると当初思われたからである。しかし、数学の世界で一変数関数論と多変数関数論とは本質的に違うことが知られているが、今回の1DCLRと高次元CLRの問題はそれと類似していると思われており、詳細はこれからの研究によるものである。 (2)確率過程量子化での隠された超対称性に、1DCLRの応用があることがわかり、その一次的な結果を研究会及び日本物理学会で発表した。この結果は、Parisi-Wuによる「D次元場の理論におけるn点関数を、ランジュバン方程式を十分な長さの架空時間で解いた結果で再現すると」いう定理に対して、十分な長さの有限仮想離散時間ではあるが、その離散時間のステップ間隔は有限で正確に結果を得る方法を与えるものである。これは有限ステップ間隔の効果をコンパクトな形にまとめたもので、例として簡単な模型(一変数定積分)を摂動及び数値計算で再現したものである。その1DLRを離散化に使った結果は、予想通りに統計誤差内で仮想時間ステップ間隔に依存しない事が分かった。1DCLRの代わりに中点処方に対応する離散化の方法も実行したが、平均値は確かに有限ステップ間隔に依存しないがその誤差は1DCLRよりも多めに出ることも分かった。さらに、連続理論でのParisi-Wuの定理を再証明する手がかりもつかんだ。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要でも述べたが、当初の目論見の2次元巡回ライプニッツ則(CLR)の格子上での局所的な実現を使った超対称性を部分的に尊重しながらの2次元Wess-Zumino模型の格子上の次元は簡単には実現が難しそうである。その理由は、格子上の局所性には複素関数の正則性が関わってくるが、数学的には一変数複素関数論と多変数複素関数論は本質的に大きく違い、それと関連するように1次元のCLRの局所的な実現と高次元のCLRの局所的な実現は本質的な違いがある。そのために、2次元も含む高次元でのCLRの具体的な表現は、1次元の場合とは違い見つけるのが難しくなった為、研究遂行が遅れている。 しかし、2次元も含めて、D次元の場の理論の確率過程量子化には隠れた超対称性を含むので、その方針で、離散化した仮想時間にCLRを活用して超対称性との関連を研究している。
|
Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」や「現在までの進捗状況」でも述べた通り、以下の二つの方針で推進する。 (1)高次元巡回ライプニッツ則の(不可能性も含めた)実現の仕方や性質を理解する。 (2)確率過程量子化での離散仮想時間形式に、巡回ライプニッツ則(特に隠された超対称性に関連して)が応用できることが分かり、他の形式よりも精度の高い数値計算ができることがわかってきたので、この方向でより高次元理論、ゲージ理論、Wess-Zumino模型などの応用に研究を進める。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍と研究期間が被ったおかげで、元々所属機関の異なる4人(研究代表者と3人の研究分担者)の研究打ちあわせをする出張回数が予定よりもかなり減ったことが次年度使用願が生じた理由である。1年間の研究計画延長により、令和6年度に複数回の研究打ち合わせおよび少額の物品や消耗品その他の購入を予定しているのが、次年度の使用計画である。そして、現在作成中である論文を早めに作成したい。
|