2021 Fiscal Year Research-status Report
平均場構造とクラスター構造の統一的模型の開発と適用
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21K03543
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Research Institution | Matsue National College of Technology |
Principal Investigator |
須原 唯広 松江工業高等専門学校, 数理科学科, 准教授 (10708407)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 核構造 / クラスター構造 / ダイニュートロン相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は2つある。一つは平均場構造とクラスター構造の統一的模型の開発することである。もう一つは、中性子過剰核において新しい構造を理論的に発見し、実験的にその存在を実証して、その構造の出現機構を明らかにする、という2つである。 今年度の研究では、2つ目の目的に対して、大きな進展があった。それは10Beのダイニュートロン相関の発達と壊れを散乱実験を通して、どのように観測することができるかを明らかにした、という内容である。ダイニュートロン相関は、中性子過剰核特有の構造であり、様々な模型を通して調べられてきたが、実際に実験的にその存在を検証する方法は明らかではなかった。そこで、我々は10Beの構造をα+α+n+n模型を用いて記述し、陽子標的の散乱断面積を微視的チャネル結合法を用いて計算し、ダイニュートロン相関の発達の程度の観測可能性を検討した。 具体的にはスピン軌道力を変化させることで、10Be中の2個の中性子を、クラスター的な空間的に相関した状態から、殻模型的な一粒子軌道に入った状態まで変化させ、その変化に応じて、散乱の断面積がどのように変化するかを調べた。結果として、基底状態や1st 2+状態の構造は大きく変化するが、弾性散乱、非弾性散乱ともに断面積は変化しないことが分かった。一方、2nd 2+状態に対しては、構造変化に伴って非弾性散乱断面積が大きく変化することが分かった。したがって、ダイニュートロン構造の発達が2nd 2+状態への非弾性散乱の実験を通して、測定可能であると分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダイニュートロン相関の発達の程度を実験を通して観測できることが分かったというのは非常に重要な結果であり、この研究の目的の一つである、様々な新奇な構造を理論的に発見しそれを実証するということに関して大きな進展があったと評価できる。その一方で、今回の計算は既存の模型を用いて行ったため、本研究の別の目的である、新しい統一的模型の開発、ということに関しては目立った進展をさせることが出来なかった。これらを合わせて、おおむね順調に進展している、と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
ダイニュートロン相関に関しては、今回の計算ではスピン軌道力に注目したが、他に中心力の構造への影響や、別の原子核でのダイニュートロン相関を検討する必要があるので、これを進めたい。新しい統一的模型の開発、という点では、反対称化準クラスター模型と高運動量反対称化分子動力学を組み合わせた方法を考案しているので、これを完成させ、具体的に18Oに適用する研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、学会がほぼオンラインで開催されたため、海外出張、国内出張ともにできず、旅費がかからなかったことが、次年度使用額が生じた理由である。 コロナの状況によるが、繰越分は学会や共同研究者との打ち合わせのための旅費と、計画当初より高騰してるパソコンの購入費用として利用したい。
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