2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K03546
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
米倉 和也 東北大学, 理学研究科, 准教授 (90769043)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 指数定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
場の量子論の量子異常における指数定理の重要性はかねてから知られていた。境界が無い多様体上におけるAtiyah-Singerの指数定理は有名だが、非摂動的なアノマリーを記述するのにはそれを拡張したAtiyah-Patodi-Singerの指数定理が重要であることが徐々に認識されてきた。これは境界がある多様体上での指数定理である。 Atiyah-Singerの指数定理は藤川の方法により物理的な導出が知られていた。フェルミオンの軸性変換を行うと経路積分の積分測度が不変でなく、量子異常によって変更を受ける。その事実からフェルミオンのゼロモードの個数をゲージ場の局所的な関数の積分で書ける。私の研究でこの藤川の方法の自然な拡張を行うことにAtiyah-Patodi-Singerの指数定理の物理的な導出を行うことに成功した。 境界がある多様体上では、多様体の内部だけではなく境界からの寄与が加わる。この境界からの寄与の物理的な解釈を見つけることがポイントであった。軸性変換を考えるとそこからネーターの定理によって導かれる電流が存在し、その電荷が軸性変換のチャージを与える。Atiyah-Patodi-Singer指数定理の境界からの寄与はeta不変量という幾何学的不変量で与えられるが、この不変量が、境界条件が定める軸性対称性の電荷によって自然に解釈されることがわかった。これにより、数学的な導出は非常に難しかったAtiyah-Patodi-Singer指数定理を物理的に自然かつ簡単に導出できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
場の量子論の量子異常についての理解が深まりそれを研究としてまとめることができたので、概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
量子異常を重要な場の量子論の具体例に応用することを計画している。特に量子色力学のダイナミクスは素粒子理論での重要な課題であり、そのダイナミクスに対する't Hooftのanomaly matchingを用いた研究は今まで多くなされてきた。近年の発展によりさらに新たな量子異常がわかってきたので、その観点からさらに研究する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で旅費を使わなかった。今後その分を物品費などに使う予定。
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