2021 Fiscal Year Research-status Report
WIMP暗黒物質の精密計算で迫る素粒子標準模型を超える物理
Project/Area Number |
21K03549
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
阿部 智広 東京理科大学, 理工学部物理学科, 准教授 (70712727)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 暗黒物質 / 素粒子標準模型を超える物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
暗黒物質の初期宇宙での生成を計算する際に,運動学的な脱結合が通常よりも早く起こる可能性のある模型の研究をおこなった。具体的には,擬南部ゴールドストン粒子を暗黒物質とする模型に着目した。この模型では暗黒物質と通常の物質の散乱が運動量移行の小ささで強く抑制されるため,運動学的な脱結合の効果を考慮しなければ,暗黒物質の生成量が正しく計算できないと考えた。実際に早期運動学的脱結合の効果を具体的に計算し,暗黒物質の質量がヒッグス粒子の質量のおよそ半分弱のいわゆるヒッグスファンネルの領域において,早期運動学的脱結合を考慮した場合としない場合で暗黒物質の生成量に大きな違いが現れることを示した。そしてその違いは,ヒッグス粒子と暗黒物質の結合の大きさに現れ,それはヒッグス粒子の暗黒物質粒子への崩壊を測定することで実験的に検証可能であることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
具体的な模型で早期脱結合の効果が大きく現れることを示すことができたため。また先行研究では,ボルツマン方程式を解く際にあらわれる衝突項が運動量移行により抑制されることはないという仮定が暗に含まれていたが,その仮定を外して計算する方法を開発できたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
我々の解析に暗黒物質同士の散乱の効果はまだ取り入れられていない。一方で,最近その効果を取り入れたと主張する研究が発表された。そこで提案された手法を用いて,暗黒物質どおしの散乱の効果がこれまでの計算にどの程度影響するのか見積もる。また,最も簡単な擬南部ゴールドストン模型には,パラメーターの微調整が必要であるなど理論的には不満足な部分があるので,その点を改善した模型の構築も行う。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍で出張が思うようにできず旅費がほぼ使用できなかったため。現在,徐々に研究会も対面で開催されるようになってきており,また出張に対する各所の規制も緩和されつつあるので,旅費としての使用計画を考えている。
|