2022 Fiscal Year Research-status Report
Resurgence theory and its application to strongly coupled physics
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21K03558
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤森 俊明 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 助教 (60773398)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | リサージェンス理論 / 場の量子論 / 非摂動効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、量子論、特に強い結合の場の量子論の解明を目指して、リサージェンスを用いて非摂動効果の解明することを目標としている。「非摂動現象」の解明は現代物理学における重要な課題の一つである。そのような現象は摂動的手法で直接的に捉えることはできないが、いわゆるリサージェンス構造を通して関連しており、摂動・非摂動効果の間には非自明な関係があると考えられている。 2022年度の研究では、場の量子論における非摂動効果の具体例を理解するために、二次元ヤンミルズ理論におけるリサージェンス理論の応用を議論した(arXiv: 2212.11988)。一般に、厳密に解ける場の量子論の問題はほとんど存在しないが、二次元ヤンミルズ理論は数少ない厳密に扱う事ができる場の理論の一例である。そのため、リサージェンス理論の「実験場」として最適な具体例として見ることができる。本研究では「Cheshire cat resurgence」と呼ばれる方法を用いて、「種数に関する解析接続」を行い、非摂動効果の情報を摂動展開から抜き出すことができるということを示した。これは場の量子論においてもリサージェンス理論が適用可能であることを示す重要な結果である。 また厳密に扱える他の例として、可積分構造を持った量子力学において、リサージェンス理論の応用可能性を議論した(arXiv:2205.07436)。近年、可積分系における非自明なリサージェンスの構造の研究がされているが、本研究ではその構造を作り出す「準古典的鞍点」を導出し、それらが本質的役割を果たしていることを定量的な評価を通して明らかにした。この結果は、より一般の可積分な場の理論に対するリサージェンス理論の応用に有用になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度に行った、二次元ヤンミルズ理論におけるリサージェンス理論では、当初の予定通り、場の量子論におけるリサージェンス理論を解析するという研究計画を達成することができたため、本研究はおおむね順調に進展していると言うことができる。「Cheshire cat resurgence」の応用という観点からは、より多くの型の場の量子論における摂動・非摂動関係の導出に関する知見が得られたため、今後に応用に役立つと考えられる。 また可積分性を持った量子力学における研究では、リサージェンス理論を用いて問題を解くための各々の手順が、可積分性を通して系統的に進められるという新たな知見が得られた。これは可積分性を持った場の量子論においても同様に有用となる知識であると考えられ、場の量子論におけるリサージェンス理論の理解へ向けて順調に進んでいると言うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に行った、二次元ヤンミルズ理論におけるリサージェンス理論の研究では、「Cheshire cat resurgence」の応用を利用して非自明な摂動・非摂動関係を導出して、場の量子論におけるリサージェンス構造の解明の足がかりとした。これは離散的なパラメータの解析接続を利用するのもであるが、そのような研究は、これまでにいくつかの場の量子論の例において議論されているが、個々の例に関する議論に留まっており、例えば「どのような場の量子論において適用可能か」などの、一般的な議論が不足している。本研究課題の「強結合物理への応用に向けたリサージェンス理論の研究」という観点からは、特定の模型に縛られない一般的な場の量子論におけるリサージェンス理論に関する知識が必要となる。今後はそれに向けてより一般的な「Cheshire cat resurgence」の応用可能性について議論を行っていく。 また2022年度に行った、可積分構造を持った量子力学におけるリサージェンス理論の応用の研究では、リサージェンス理論を用いて問題を解くために可積分性から得られる情報が有用であることが判明したが、これは可積分な場の量子論においても同じく有用となる知識であると考えられる。このような知見を利用して、可積分な場の量子論におけるリサージェンス構造を解明することが今後の課題となる。特に近年その存在が明らかになってきている積分な場の量子論におけるいわゆる「リノーマロン」の構造を明らかにすることによって、より一般の強結合場の量子論における非摂動効果の諸問題の解明へとつなげる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、多くの学会および研究会がオンライン開催されたため、旅費などの経費が予定してい額と比較して小さいものとなった。今後、新型コロナウィルスの影響が収束し、通常の研究活動が再開されることを前提として、国内・国際学会への参加旅費を予定している。さらに、研究者の招聘に伴う旅費、専門知識提供に対する謝金、人件費の支出も計画している。また、研究プロジェクト遂行に必要な物品や図書の購入も予定している。
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Research Products
(2 results)