2021 Fiscal Year Research-status Report
符号問題に対する一般化thimble法のQCDへの適用
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21K03568
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 宏次 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (10313173)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 符号問題 / 有限温度密度の量子色力学 / 統計力学 / 実時間量子発展 |
Outline of Annual Research Achievements |
分配関数の評価に符号問題を有する系に対して、一般化Lefschetz thimble法を用いるための準備計算を実施した。具体的には、1+1次元massive Thirring模型について、thimble法の有効性と問題点を確認して、先行研究の結果を再現することができた。一方で、カイラルランダム行列模型に対して先行研究の手法適用を試みるために、実用的な計算コードを開発中の段階である。また、本研究の主題である非可換ゲージ理論QCDの有限密度下のシミュレーションのための計算アルゴリズムについては、有限温度QCDの計算コードを基本にして、thimble法適用コードを開発中の段階である。一方で、計算機環境として新たにGPU 計算機を導入して、専用機として使用する準備を行った。 実時間量子発展ではKeldysh形式を離散化した格子上に適用することになるが、指標展開に基づくて、われわれが書き下した格子上のKeldysh形式の分配関数についての解析的な性質の理解を深めるとともに、まず実スカラー場の場合について、我々の作用と先行研究の作用との数値解析上の性質を明らかにするべく、計算機上に実装するための準備を進めている。 その他に、QCD相図解明に関連する課題として、QGPからの光子生成に関する研究に取り組み、これまでに見過ごされてきたハドロン化過程に伴う光子放射の重要性を指摘し、数値計算を行った上で論文にまとめて投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
遅れの要因は、オンライン授業対応と、有限温度密度QCDの関連研究課題とに時間を割かれた結果、本研究に当初想定した十分な研究時間を取ることが難しかったことである。
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Strategy for Future Research Activity |
教育・研究環境が平常に戻りつつあることから、本課題に十分な時間を確保して、集中的に研究を遂行する。
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Causes of Carryover |
数値計算機環境を準備するために、高性能ワークステーションを購入する予定であったが、経費の関係上、数値計算用の汎用GPUを導入してワークステーションに組み込む形にして有効活用を図った。一方で、感染症対策のため多くの研究会・国際会議がオンライン開催となったために旅費の支出が2021年度は無かった。 感染症の流行状況にも依存するが、2022年度は研究会発表・交流を進めるとともに、必要な計算設備を追加して、課題遂行に当たる。
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