2023 Fiscal Year Research-status Report
Behavior of hadrons at finite density
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21K03573
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 純 大阪大学, 核物理研究センター, 協同研究員 (30130876)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
保坂 淳 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (10259872)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 有限密度 / 数値シミュレーション / 符号問題 / 重イオン反応 / 量子コンピュータ |
Outline of Annual Research Achievements |
強い相互作用を行う核子、中間子などのハドロンの研究において、数値シミュレーションはハドロンの非摂動的な振る舞いを研究できる強力な手法である。しかし、高エネルギー重イオン反応や中性子星内部などの有限の化学ポテンシャル領域においては、モンテカルロ計算における確率が負になってしまう「符号問題」のためシミュレーション解析が困難であった。 この困難を克服するために、本申請者が提唱したカノニカル法や、ドイツ・ハンガリーグループの多パラメータ再規格化法が提案されている。カノニカル法は、符号問題の起こらない純虚数化学ポテンシャル領域でカノニカル分配関数を求め、それから構成した大分配関数を実化学ポテンシャル領域に写像する。 本年は、次世代のシミュレーション環境として有望な「量子コンピュータ」において、有限密度シミュレーションを行うための情報収集を行なった。残念ながら、国内で量子コンピュータのシミュレーションの高速化のテストを行う環境が得られないので、量子コンピュータがハドロンのシミュレーションに広く使われている米国の状況について、ワシントン大学のマクレーラン (Larry MacLerran)教授から状況を収集し、日本電気のSXスーパーコンピュータで量子計算を行う可能性を調査した。量子コンピュータではすべての計算が高速になるわけではないので、文献から高速化の手法を学ぶとともに、その高速計算を可能にする量子コンピュータの構造について調査を行なった。 有限密度におけるハドロンの振る舞いは構造に強く依存する。特にハドロンの硬い(コンパクトな)成分と柔らかい(分子的な)成分は密度依存性が著しく異なると予想される。本年度は関連する文献調査を行い、今後有効理論でハイブリッド的なアプローチを有効理論と格子QCDによる方法を組み合わせて進める可能性を検討するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「有限密度でのハドロンの振る舞い」の研究のために必要な環境構築、必要な技術知見の収集は順調に行われている。しかし、具体的なシミュレーションを実施する段階には至っていない。 一方で10重項バリオンのSU(6)クォーク起源の成分とπN散乱共鳴成分の共存に関する文献調査を進めた。 以上のことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
「有限密度でのハドロンの振る舞い」の研究を進めるために、国内外での実験状況の現状を調査し、理論的に必要な研究、特にシミュレーションの準備を進める。
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Causes of Carryover |
量子コンピュータを使用して研究を進める予定であったが、国内での量子コンピュータ利用の準備が遅れているため。
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