2021 Fiscal Year Research-status Report
Designing of experiments for fundamental physics using man-made atoms
Project/Area Number |
21K03575
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉村 太彦 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 客員研究員 (70108447)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 宇宙項 / 暗黒エネルギー / 暗黒物質 / インフレーション / 原子重力波 / 原子ブラックホール / スカラー・テンソル重力理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
人口原子を使う基礎物理実験の対象として、今年度は宇宙初期現象の解明に関する問題開拓に注力した。暗黒エネルギーと暗黒物質の起源が宇宙論分野で最大の課題だが、本研究では、これらを宇宙項問題の解決に関連して捉え、インフレーションと同時に説明する理論構築を行った。宇宙項問題は積年の重要課題であるが、いまだに満足のいく解決が得られていない。conformal gravity に基づくスカラー・テンソル理論が宇宙項の時間変化を予言し有力な理論的枠組みとなる。宇宙項の変化はインフラトンと呼ばれるスカラー場の時間変化に関連し、これがインフレーション時、その後の熱い宇宙初期での宇宙項ゼロに向かう緩和過程を総合的に記述できる理論構築に成功した。対称性の自発的破れに向かうインフラトンの動きがインフレーションを起こし、その後、停留点での振動が熱い宇宙を構成する粒子の熱的エネルギーに転嫁する。それとともに、場の量子ゆらぎが成長し、やがて対称性の回復をもたらす。対称性回復に向かうインフラトンの動きが宇宙項をゼロ値に緩和する。この成果はこれに必要な対称性の自発的破れの帰結をまとめた論文、アクシオン暗黒物質への影響の論文とともに3本の論文としてまとめた。このうち、2本は既に学術雑誌Physical Review D に出版済みかまもなく出版される予定である。 この理論は宇宙初期に重力が他の力に比べて強くなることを予言する。これは原子重力波放出を高め、原子ブラックホール生成を促進する。これらは現在、進行中の重力波検出実験により検出される可能性があり、今後、論文の重要性が増すと思われる。引き続き、これらの理論による宇宙物質・反物質不均衡問題を研究中であるが、まもなく完成する見込みである。 前年度にまたがり完成した人口原子を使った不安定状態の指数法則からのずれに関する論文はまもなく雑誌出版の見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
宇宙初期理論の研究は当代表者として久しぶりであるが、この間、重力波の検出、宇宙マイクロ波角分布の精密測定、大規模構造形成のシミュレーションなどで大幅な世界の研究進展があった。これらの宇宙物理の進展に触発されて、従来温めてきた構想を再検討し、研究を深めるチャンスが与えられた。本来なら素粒子物理の実験研究が解明すべき課題が、むしろ重力波放出の精密測定など、宇宙観測から大きな進展が期待される状況が実現しつつある。これらの背景をもとに、初年度の研究課題に宇宙論の重要課題をとりあげた。その成果たる本研究者の宇宙項問題解決提案は宇宙初期理論を再構築し、測定と矛盾のない枠組みを確立したこともあり、これが学会によりどのように受け入れらるるか、楽しみである。また、この理論に即した原子を使う実験提案を考察できるのかが、今後の課題となる。 これらの問題で、暗黒物質の検出、特に暗黒物質粒子の質量、通常物質との結合定数、などが鍵となるパラメータであり、これらを明らかにできたのは大きな成果であった。もう一つの課題は現在解明中の物質・反物質不均衡の起源の理解であり、ニュートリノ振動との関連、ブラックホール蒸発のシナリオを鋭意、解明中である。これらを明らかにするとともに、原子物理実験との連携を推進していく。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に発表した宇宙項問題解決に基づく初期宇宙論は、詳細を極めるべき課題を抱えており、2年度もこの方向で理論研究を深めるのが得策である。重要課題の一つが、原子ブラックホールを含む宇宙物質相の分類、ブラックホール蒸発の初期宇宙への影響、電弱相転移、元素合成への定量的影響、宇宙晴れ上がり期への影響特にマイクロ波分布の詳細、などである。また、本年度の研究でほぼ解明できた、物質・反物質不均衡問題に関連する詳細を詰める。特に、ニュートリノ振動のパラメータが実験によりほぼ分かっているので、不均衡度がこれらにどのように依存するか、明らかにしたい。 本年後半からAdvanced LIGO 等の重力波検出実験が改良後の実験を再開する。いままでより事象数が大幅に増える見込みがあり、本研究者の対案する宇宙論の一部が検証できる可能性があるかどうか、を明らかにしたい。 人口原子を使う基礎物理の解明には、人口原子関係の実験研究者との連携が必須であるが、これもコロナ禍の影響でいままでは思うように進まなかった。今後は研究連携を促進して、新たな手法の開発に努めたい。 本研究者の新しい宇宙論は研究公表してまだあまり時間がたっていないので、幸いにしてコロナ禍が収まるようなら、外国の国際会議で発表し、外国人研究者との交流を深めていきたい。国内研究者とはいくつかのセミナー講演の予定もあり、できることなら、共同研究者を求めていきたい。
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Causes of Carryover |
研究者の外国出張経費、国内研究連絡経費、国内研究者を招聘することによる研究打つ合わせ経費に関係する、旅費等の予定額をコロナ禍により消費できなかったことが繰り越しの主たる理由である。今後は外国出張を増やすなどとして、使用を増やす、当初予定より図書購入を増額する、計算ソフトの購入などにより、使用していきたい。
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Research Products
(2 results)