2021 Fiscal Year Research-status Report
準非破壊型飛行時間検出器による超重元素探索の高効率化
Project/Area Number |
21K03600
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
長江 大輔 九州大学, 理学研究院, 准教授 (60455285)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 飛行時間検出器 / 薄膜 / マイクロチャンネルプレート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、薄膜とマイクロチャンネルプレートを用いて、低エネルギーな軽粒子に対しても高時間分解能、高検出効率が得られる準非破壊型飛行時間検出器を開発し、超重元素探索実験の高効率化を目指すものである。計画段階においては、当該年度は小型試作機を用いた基礎データ収集であったが、大型実機で使用を予定していたマイクロチャンネルプレートを借用することができた為、大型実機の設計・製作を行い、九州大学タンデム加速器からのビーム用いて性能評価を行った。 準非破壊型飛行時間検出器ではビームが薄膜へ入射することにより、薄膜より二次電子が放出し、その二次電子を電場にてマイクロチャンネルプレートへ輸送することにより、信号を得る。まずシミュレーションにて目標である時間分解能:50ピコ秒、検出効率:90%以上を達成できる電場条件を調査し、現実的な条件でシミュレーション上では時間分解能:50ピコ秒、検出効率:95%以上を達成できる結果を得た。 シミュレーションに基づいて、大型実機を製作し性能評価を行った。薄膜にはマイラー0.5ミクロンの片面に200オングストロームの金を蒸着し、二次電子の放出量増大を図った。九州大学タンデム加速器からの28Siビームを利用した性能評価で得られた時間分解能は検出効率は、薄膜中心付近でそれぞれ250ピコ秒、97%であった。これらの値にはビームの入射位置による依存性が観測され、薄膜周辺では性能が低下することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画での当該年度の目標は小型試作機の設計・製作し、数種類の薄膜を用意して性能を評価することあったが、大型のマイクロチャンネルプレートを使用することが可能となった。その為、次年度に予定していた大型実機の設計・製作と性能評価を前倒しして行った。一方、数種類の薄膜を用意する計画であったが、用意できた薄膜は一種類のみであった。総じて順調に研究は進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
時間分解能の向上、時間分解能・検出効率の位置依存性の改善、数種類の薄膜を用いた性能評価を進める。時間分解能は検出器に印加する電場を大きくすることで解消できると考えているが、同時に放電対策も行う。時間分解能・検出効率の位置依存性は電場の乱れに起因している考えられ、電場の一様性の向上に向けて、検出器の構造を改良する。これらの改良を施したのち、金蒸着マイラー膜を用いて性能を評価する。十分に向上が見られた後、薄膜として金やCsIを蒸着した炭素を用いて性能を評価する。
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Causes of Carryover |
大型実機で使用を予定していたマイクロチャンネルプレートが借用できた為、小型試作機での性能評価ではなく、大型実機による性能評価に計画を切り替えた為。また購入予定であった高電圧電源も借用できた為。
大型実機の性能は目標値を十分に達成できていないが、性能評価の結果は当初購入を予定していた高電圧電源より大きな高電圧を発生できる電源が必要であることを示唆する結果であった。その為、小型試作機製作で使用する予定であった予算は高電圧電源の購入に充てる予定である。
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