2022 Fiscal Year Research-status Report
準非破壊型飛行時間検出器による超重元素探索の高効率化
Project/Area Number |
21K03600
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
長江 大輔 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任准教授 (60455285)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 飛行時間検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、薄膜とマイクロチャンネルプレートを用いて、低エネルギーな軽粒子に対しても高時間分解能、高検出効率が得られる準非破壊型飛行時間検出器を開発し、超重元素探索実験の高効率化を目指すものである。 準非破壊型飛行時間検出器では、ビームが薄膜へ入射する際に、薄膜より放出される二次電子を利用する。放出された二次電子を電場にて加速後、別途印加した電場によって電子を検出する装置マイクロチャンネルプレートへ輸送し、信号を得る。昨年行った九州大学タンデム加速器施設での性能評価試験では、得られた時間分解能、検出効率は、薄膜中心付近でそれぞれ250ピコ秒、97%であり、これらの値にはビームの入射位置による依存性が観測され、薄膜周辺では性能が低下することが分かった。 昨年度の性能評価試験にて得られた時間分解能が、目標値に届いていなかったこと、時間分解能・検出効率にビームの入射位置による依存性が観測されたことから、現時点での性能では研究計画に記載した薄膜材質依存性の評価が難しいと判断し、本年度は、時間分解能の向上ならびに位置依存性を改善するためにシミュレーションを進めた。シミュレーションでは時間分解能の加速電場依存性を調査するとともに、同時に二次電子飛行時間の放出位置依存性も調査した。調査の結果から、九州大学タンデム加速器施設での性能評価試験では、加速電場の不十分、加速電場の均一性の不十分が示唆され、大きな加速電場と加速電場の均一性を向上するような飛行時間検出器の構造改良が目標値到達には必要と分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画での当該年度の目標は大型実機の設計・製作と性能評価ならびに各性能の薄膜材質依存性の評価であったが、昨年度に大型実機の設計・製作と性能評価は行えたものの、薄膜材質依存性の評価は行えていない。総じて研究の進展はやや遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
時間分解能の向上、時間分解能・検出効率の位置依存性の改善、数種類の薄膜を用いた性能評価を進める。まずは二次電子の加速電圧を大きくすることで時間分解能の向上を試みる。時間分解能・検出効率の位置依存性は電場の乱れに起因している考えられ、電場の一様性の向上に向けて、検出器の構造を改良する。時間分解能の向上、時間分解能・検出効率の位置依存性の改善が達成できたのち、薄膜の種類を変えて性能を評価する。
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Causes of Carryover |
大型実機による性能評価ではなく、シミュレーションによる評価に切り替えたため。
大型実機の性能は目標値を十分に達成できていないが、シミュレーションによる評価の結果は大きな高電圧を発生できる電源が必要であること、飛行時間検出器の構造改良が必要であることを示唆するものであった。その為、小型試作機製作で使用する予定であった予算は高電圧電源の購入、構造改良に充てる予定である。
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