2023 Fiscal Year Research-status Report
Full-sky map creation of the gravitational lensing potential
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21K03610
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
永田 竜 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 招聘職員 (00571209)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 重力レンズ / 宇宙マイクロ波背景放射 / データ解析 / 偏光 / 系統誤差 |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロ波背景輻射(CMB)偏光の空間的な分布のパターンを分析することで得られる情報は、幾つもの時代の宇宙を明らかにすることができる強力な手掛かりである。CMB 偏光は、宇宙の密度構造による光路の屈折(重力レンズ効果)を受けることで、その像が変調される。結果として偏光地図に発生する統計の非一様性を援用することで、光路上の質量分布の推定が可能となる。現在、複数の観測計画によって CMB 偏光地図の重力レンズ効果の測定が進められている。本研究の目標は重力レンズポテンシャル全天地図作成のための実験的な枠組みを確立することである。 2021年度には必要なソフトウェア環境の構築を完了しており、数値シミュレーションを遂行する体制が整っている。2022年度には標本収集を開始し初期標本による先行解析までを行っている。2023年度には、検討対象であった全ての較正誤差について標本収集を完了することができた。レンズポテンシャルの再構築からレンズ雑音の除去解析(delensing)まで、取得した標本へ一連のレンズ解析を施し、標本群の統計評価までを行った。レンズポテンシャルの再構築精度やレンズ雑音の除去効率は、初期標本への解析から得られた示唆に準じたものであり、実際の観測において達成される較正水準の範疇であるとの評価を得た。較正誤差の一部の種目において当初見込みよりも計算時間を要したため、成果の告知活動に予定からの遅れが生じているところである。現在は、研究成果を総括して論文の形で発表するための準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題の実施計画は「擬似観測データの標本生成」、「標本の収集」、「収集した標本群の解析」の三つから構成される。計画3年目を終えた現時点で、これら全ての工程が完了済みである。標本の収集に際して、較正誤差の一部の種目で事前の予想を大幅に超える計算時間を必要とした。それについては、ソフトウェアの並列化などの対応を行い、計算時間の圧縮に取り組んだ。超過を全て吸収することにはならなかったが、当該種目についても現時点で事後解析までを含めた全ての工程を終えている。既に、研究課題の結論と言える知見を得るに至っているものの、研究活動全体としては、成果発表の予定が後ろ倒しになっている。課題期間を延長することで成果発表のための時間を確保して、これまでの研究を総括した論文の発表などを行い、本研究課題の活動予定を完遂する見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度までの研究活動を通じて得られた知見を整理し、年度前半中には論文などの形で成果発表を行う予定である。論文では、重力レンズポテンシャルの全天地図作成とそれを援用したレンズ雑音の除去解析について、観測に付随する較正誤差の観点でその実現性を詳らかにする。研究自体の作業工程は完了しているため、本年度の推進に困難は認められず、特段の施策を要さず本課題に伴う活動を終えることができる見込みである。
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Causes of Carryover |
2022年度から2023年度に渡って実施された観測シミュレーションデータの標本収集において、事前の見込みを大きく超過する計算時間を要したため、成果発表の予定に遅れが生じている。研究そのものは既に全工程を終えているため、本課題の活動は延長期間中に問題なく完了できる。繰越金は、論文出版費用などの成果告知活動を使途とする。
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