2021 Fiscal Year Research-status Report
Star formation Process during main accretion phase
Project/Area Number |
21K03617
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
町田 正博 九州大学, 理学研究院, 准教授 (10402786)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 星形成 / 惑星形成 / 磁気流体力学 / ジェット / 原始惑星系円盤 / 原始星アウトフロー |
Outline of Annual Research Achievements |
星形成過程の大規模シミュレーションを実行し、分子雲コアから原始星の誕生を経て円盤散逸を開始するまでの段階を解明した。星は分子雲コアというガスの塊の中で誕生する。誕生後に星の周囲には星周円盤が成長し、円盤内部では惑星が誕生する。円盤の形成と進化は濃いガスの中で起こるため、直接観測が出来ない。そのため、円盤の形成と進化は数値シミュレーションを用いて解明する必要がある。この研究では星形成の母体となる分子雲コアを初期条件として、多層格子法を用いて非理想磁気流体方程式を解き分子雲コアの重力収縮の過程を調べた。計算の結果、星形成後の主降着段階で円盤から駆動しているアウトフローは徐々に弱まっていくが、エンベロープの密度が十分薄くなると再度円盤表面からガス流(磁気円盤風)が出現することが分かった。これは、中心星の質量増加と共にガスの落下速度が大きくなるため動圧が増加しアウトフローを抑えるが、中心星の質量成長がほぼ止まると、エンベロープの密度が薄くなることにより動圧が弱まるためだと考えられる。シミュレーションは原始星形成後15万年間の計算を行ったが、計算の最後では、エンベロープの質量は初期の分子雲コアが持っていた質量の2%以下になっており、エンベロープから円盤への降着は、ほぼ止まっていると考えられる。この段階では、円盤は磁気円盤風により角運動量と質量を星間空間によって放出する。そのため、円盤風が円盤進化を支配する。計算終了時に磁気円盤風によって抜ける角運動量を見積もったところ、2百万年というタイムスケールで円盤の全角運動量は輸送され、円盤は散逸することが分かった。この円盤散逸のタイムスケールは観測で見積もられている原始惑星系円盤の寿命とほぼ一致する。そのため、磁気円盤風は円盤進化を考える上で重要な役割りを果たすことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原始星形成後の主降着段階を解明するため、原始星ジェットの研究、大質量連星形成の研究、主降着段階の磁気回転不安定性の研究をはじめ、10報程度の論文を国際誌に投稿し受理された。 原始星ジェットの研究では、原始星への質量降着率が高い場合にはラム圧によりジェットが駆動しないことを示した。これは、観測されているように大質量星がジェットを放出するためには強磁場を必要とすることを意味する。また、多くの大質量星がジェットを放出しているならば、大質量星は強磁場環境でのみ形成されることを意味している。 大質量連星の研究では、磁気制動による角運動量輸送を考慮すると、近接大質量連星が形成しうることが分かった。大質量連星は最終的には重力波源天体である連星ブラックホールになると考えられる。星形成過程ではより後期に降着するガスはより大きな角運動量を持っているため、連星軌道が時間ともに広がっていく。この研究では磁気制動によって軌道が増加が起こらず、10天文単位以下の近接連星系が形成しうることを示した。 降着段階の磁気回転円盤不安定性の研究では、原始星周囲に形成する円盤中で、磁気回転不安定性が成長するかどうかを調べた。最初に線形解析を行い磁場の散逸を考慮して磁気回転不安定性が成長するかどうかを見積もった。その後、円盤モデルを与え、円盤中の化学平衡状態を計算し、各々の荷電粒子の存在量を見積もった。最後に荷電粒子の存在量から磁気散逸係数を導出した。計算の結果、原始星周囲の若い円盤中では磁場の散逸が強く効くために磁気回転不安定性は成長しないことが分かった。 これらの研究の他にもALMA望遠鏡の観測によって主降着期のアウトフロー、ジェットの駆動や連星からのジェットについての研究を行い、査読誌に受理された。そのため、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
分子雲コアからの円盤の形成進化の研究では、原始星形成後15万年までの計算を行った。しかし、観測から原始惑星系円盤の寿命は300万年程度であることが分かっている。そのため、より長時間の進化計算が必要である。今後は2021年度に購入した専用計算機、ベクトル型スーパーコンピュータSX-Aurora TSUBASAを用いて後期段階のより長時間計算を行う。また、数値計算コードの高速化にも取り組む。 これまでの計算ではガスのみを考慮しており惑星の素であるダストを直接計算はしていなかった。2021年度にダストを考慮して計算を行う数値計算コードを開発したため、今後は主降着段階で円盤が成長し散逸していく過程でダストがどのように振る舞うかを調べ、星形成の研究を惑星形成の研究に接続させる。 また、2021年度からALMA望遠鏡の観測データを用いて複数の星形成領域で原始星が普遍的にアウトフローを駆動するかどうかを調査している。多くの天体では原始星段階にアウトフローが付随しているが、無視できない数のアウトフローが付随していない天体(原始星)も観測されている。数値シミュレーションでも磁場が極端に強い場合、または弱い場合にはアウトフローは駆動しない。今後は、望遠鏡観測と数値シミュレーション結果の比較を行い、星形成環境や星形成の条件に迫る研究を行う。これらの研究をまとめ10報程度の論文の査読誌への投稿を予定している。また、研究結果を国際会議で発表する。
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Causes of Carryover |
共同研究者と研究打ち合わせを行うためカナダ オンタリオ大学の訪問を予定していたが、コロナ禍で渡航出来なかったため次年度に使用する。また、計算機サーバの購入を予定していたがコロナ禍で納入が間に合わないことが分かったため、これも次年度の購入を予定している。
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Research Products
(6 results)