2021 Fiscal Year Research-status Report
A new type of accretion flow in high-mass X-ray binaries with circumstellar disks
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21K03619
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
岡崎 敦男 北海学園大学, 工学部, 教授 (00185414)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大質量連星系 / Be星 / 星周円盤 / 降着円盤 / 潮汐相互作用 / X線 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙における様々な活動現象の多くは、コンパクト天体(白色矮星、中性子星、ブラックホール)を持つ連星系における、伴星からコンパクト天体へのへの降着流によって引き起こされている。 コンパクト天体への降着流は、その仕組みが複雑で、まだ解明されていない点が多い。本研究では、Be/X線連星系[星周円盤(恒星の周りに分布する円盤状のガス)を持つ大質量星と中性子星との連星系]に対して大規模シミュレーションを行い、星周円盤中のガスがコンパクト天体に捕獲され降着する様子を連星系を特徴付ける様々なパラメータを変化させて調べている。 現時点で調べる事のできたパラメータの組み合わせはまだ少ないが、それでもシミュレーションの結果、星周円盤が軌道面に対してある範囲の角度をなしている場合に、コンパクト天体の周囲につくられる降着円盤の方向が連星軌道周期で大きく歳差運動する現象が生じることが判明した。また、この現象を数十軌道周期という長期間にわたり追いかけることができた。 これらのシミュレーションで見いだされた大きな角度で起こる速い歳差運動の起源は、近星点の前と後に起こる2つの降着流が衝突することと近星点付近で降着流に伴星から大きな潮汐トルクが働くことが複合的に組み合わさった結果ではないかと考えられる。この時の降着流の降着時間は動的な時間よりは長いが、粘性時間よりもはるかに短い。このような降着流はコンパクト天体を持つ他の連星系グループには見られないものであり、今後、その振る舞いをより詳しく調べるとともに、この現象により引き起こされる測光的および分光的特徴について調べる必要がある。 本研究により得られた初期成果の一部は、2021年7月に開催された国際会議「Be/X-ray Binaries Workshop」(オンライン開催)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究の進捗が当初計画よりも遅れている理由の1つは、必要な研究時間を確保できなかったことに起因する。当初想定していた以上にコロナ禍が続き、授業および学内行政に関わる業務に時間をとられ、プログラムの改良(特に大規模並列化)を進めることができなかった。そのために、1つ1つのシミュレーションに長い時間を要し、結果として、調べる事ができたパラメータの組み合わせが、当初計画していたものよりもかなり少なくなってしまった。 研究遅延のもう1つの理由は、当初の計画に入っていなかった物理過程を調べることに時間を割いたからである。本研究の対象である「軌道周期で変化する降着流」は、Be星の星周円盤が連星軌道面に対して傾いている時に生じる現象であるが、現実には、そのような系ではコンパクト天体のまわりにできり降着円盤にBe星の恒星風が衝突するはずである。その効果は恒星風が強いときには無視できない大きさになることが予想されるので、恒星風の影響を取り入れた降着シミュレーションを行う必要があると考えた。そのようなシミュレーションの準備作業を行うことに時間を用いた結果、当初計画していた研究部分にかける時間が短くなってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、傾斜した星周円盤を持つBe/X線連星系における降着流の構造を、星周円盤の成長・減衰も考慮に入れて系統的に調べる。これは当初の計画の第一段階にあたるもので、降着円盤研究の空白地帯を埋めるために必須の研究である。系統的に調べた結果、どのような場合に上記の「連星軌道周期で大きく歳差運動する降着流」が生じるかが判明するはずである。そして、当初の計画には入っていなかったが、そのような降着流に対して、Be星(大質量星なので強い恒星風を持つ)の恒星風の与える影響についても調べる。恒星風のモデルとしてはベータモデルと呼ばれるものを用いる(ベータモデルは放射で加速された恒星風の速度分布をよく表すことのできる解析的モデル)。恒星風の影響を取り入れることにより、より現実的な状況を理解できることが期待できる。 上記研究と並行して、新しいタイプの降着流の構造と降着/角運動量輸送の物理を詳細に調べていきたい。また、その後、得られた降着流から期待される観測的特徴を明らかにすることで、モデルの妥当性の検証を行う予定である。
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Causes of Carryover |
以下の2つの理由により、当該年度に約60万円が未使用となった。 1.世界的なコロナ禍の継続により、参加しようとしていた国際会議がオンライン開催になったこと。 2.大規模並列化を行い、多ノードを使ったシミュレーションを計画していたが、プログラムの改良が終わらず、そのために当初計画していた大型計算機利用負担金が発生しなかったこと(利用負担金が少額にとどまったこと)。
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Research Products
(1 results)