2021 Fiscal Year Research-status Report
Observational Estimates of Magnetic Fields inside Neutron Stars
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21K03624
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牧島 一夫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 名誉教授 (20126163)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中性子星 / マグネター / 磁場 / 自由歳差運動 / X線 |
Outline of Annual Research Achievements |
マグネターと呼ばれる一群の中性子星(NS)は、典型的なNSより2桁も高い、Bd~10^14 Gに達する双極子磁場をもち、それらの内部には、さらに2桁も強いトロイダル磁場が潜むと考えられる。このトロイダル磁場は星の外部に顔を出さないため、その強度Btの観測的推定は困難を極める。しかし我々は、強いBtがNSを縦長に変形させると、NSの自転軸がふらつく「自由歳差運動」が起き、結果として周期Pでの自転パルスの位相が長い周期Tで変調されること、2つの周期の比P/Tが変形を与えてくれること、またそこからBtが推定できることに世界で初めて着想した。2例の成功を踏まえて提案された本課題は、硬X線公開データを用い、この研究を大幅に進展させることを目的とする。初年度には、前課題の成果であるSGR 1900+14におけるP/T比の決定結果を、論文出版できたたことを皮切りに、以下の成果を得た。 1. 「すざく」、「あすか」、NuSTARの公開データを用い、代表的マグネターSGR 1806-20からT=17 ksecの位相変調を発見し、25年間にPの増加に比例しTも延びていることを見出した。これは自由歳差運動という解釈を強化する。 2. 前課題ですでに「すざく」の公開データを用い、 SGR 0501+4516と1RXJ 1708-4009という2つのマグネターからT=16.4 ksecと約48 ksecの位相変調の兆候を得ており、それを確定できた。これで検出は6例目となり、マグネターは普遍的にBt~10^16 Gをもつことが確定的となった。 3. 6例につきBt/Bd比を求めたところ、時間とともにそれが増加することを見出した。これはNSの磁場の進化に関する極めて新しい発見である。 4. 以上の研究成果を、内外の研究会で発表し、また著書の一部に最新の研究成果として書き込んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題は、 [Q1]: マグネターや類似天体は普遍的にBt~10^16G のトロイダル磁場を内包するか? [Q2]: Btは、天体のBd、スピン周期P、特性年齢、X線光度などと、どう相関するか? [Q3]: 強磁場 NSを、(Bd, Bt) 平面で分類すると、どのような図式が得られるか? という3つの問いに3年間で答を与えることを目的として立ち上がった。「研究実績の概要」で述べたように初年度で、3つの目標のうち Q1にほぼ確実な答えを出すことができ、またQ2にも極めて有力な作業仮説を得た。これらはともに、世界トップクラスの成果と自負する。Q2について具体的には、Bt/Bd が時間 tの関数として、t^0.35にほぼ比例して大きくなるという描像である。よって、外から見える双極子磁場Bdは弱まったが、内部に強いトロイダル磁場Btが残る、多数のNSの存在が予言され、天文学的にも、またNSの磁場の起源を問う物理学としても、たいへん貴重な知見である。この進展の原動力の1つは、年度の後半より、JAXA宇宙科学研究所ポスドクの内田和海博士がこのテーマに興味を持ち、衛星データの一次処理などに大きく協力してくれたことである。
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Strategy for Future Research Activity |
公開データの解析については、以下の3項目を目標として研究を進める。(1) SGR1806-20の解析を完了させ、論文として出版する。(2) SGR 0501+4516および 1RXJ 1708-4009のデータ解析結果を確定させ論文化し、その中で Bt/Bd比の進化を報告する。(3) これまで解析した6例のマグネターのうち5例で、パルスの位相変調パラメータがエネルギーに依存する現象が見られているで、その現象論的な理解を深め、作業仮説を構築する。(1)を年度の前半、(2)を年度の後半で実施し、(3)は通年の作業とする。 加えて新鋭X線衛星による観測提案にも挑戦したい。1つは昨年末に米国から打ち上げ成功した、世界初のX線偏光衛星IXPE (International X-ray Polarimetric Explorer)で、その重要なメンバーである玉川徹博士(理化学研究所・主任研究員)と協力し、SGR 1806-20などの観測を提案したい。X線偏光は、これまで人類が手にしていなかった全く新しい情報源である。もう1つは JAXAが2022年度内に打ち上げ予定のX線分光撮像衛星 XRISM (X-ray Imaging and Spectroscopy Mission) で、これは2016年に短命に終わった「ひとみ」衛星の再挑戦機である。XRISMを用い、連星系の中に見られるマグネター類似天体 (X Persei, 4U0114+65, 4U2206+54など) の鉄輝線の精密分光から、Alfven半径を決め磁場強度を推定する計画で、東京大学の馬場彩・准教授、理化学研究所の榎戸輝揚博士などとの協力を予定している。
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Causes of Carryover |
衛星観測データの一次処理を行ってもらうため、大学院生等による支援を予定し謝金を計上していたが、幸いJAXA宇宙科学研究所のポスドク内田和海博士の協力を得ることができたため、謝金を部分的に減額・節約することができた。他方で本課題の申請時には、COVID-19の見通しが不明で、研究集会はすべてオンラインであろうと考え、旅費を計上していなかったが、内外の研究集会の一部は、対面方式、あるいは対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド方式に戻ろうとしている。したがって2022年度には、旅費の計上が必要となると考えられ、2021年度の節約分をそれに充当することで、研究のより効率的な遂行が見込まれる。
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[Journal Article] Broadband High-energy Emission of the Gamma-Ray Binary System LS 5039: Spectral and Temporal Features Using NuSTAR and Fermi Observations2021
Author(s)
Yoneda, H., Khangulyan, D., Enoto, T., Makishima, K.,Mine, K., Mizuno, T., and Takahashi, T.
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Journal Title
Astrophysical Journal
Volume: 917
Pages: id.90
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Discovery of a strong 6.6 keV emission feature from EXO 1745-248 after the superburst in 2011 October2021
Author(s)
Iwakiri, W.B., Serino, M., Mihara, T., Gu, L., Yamaguchi, H., Shidatsu, M. and Makishima, K.
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Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: 73
Pages: 1405-1417
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Discovery of 40.5 ks Hard X-Ray Pulse-phase Modulations from SGR 1900+142021
Author(s)
Makishima, K., Tamba, T. , Aizawa, Y., Odaka, H., Yoneda, H., Enoto, T., and Suzuki, H.
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Journal Title
Astrophysical Journal
Volume: 923
Pages: id.63, 17pp
DOI
Peer Reviewed
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