2022 Fiscal Year Research-status Report
Observational Estimates of Magnetic Fields inside Neutron Stars
Project/Area Number |
21K03624
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牧島 一夫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 名誉教授 (20126163)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 中性子星 / マグネター / 磁場 / 自由歳差運動 / X線 / ガンマ線連星 |
Outline of Annual Research Achievements |
マグネターと呼ばれる一群の中性子星(NS)は、典型的なNSより2桁も高い、Bd~10^14 Gに達する双極子磁場をもち、それらの内部には、さらに2桁も強いトロイダル磁場が潜むと考えられる。このトロイダル磁場は星の外部に顔を出さないため、その強度Btの観測的推定は困難を極める。しかし我々は、強いBtがNSを縦長に変形させると、NSの自転軸がふらつく「自由歳差運動」が起き、結果として周期Pでの自転パルスの位相が長い周期Tで変調されること、2つの周期の比P/Tが変形を与えてくれること、またそこからBtが推定できることに世界で初めて着想した。本課題は、硬X線公開データを用い、この研究を大幅に進展させ、マグネターのトロイダル磁場に関する知識を大きく前進させることを目的とする。2年目に当たる2022年度は、以下の成果を得た。 1. X線衛星「あすか」により1999年に観測されたガンマ線連星LS 5039のアーカイブデータを解析することで、「すざく」とNuSTARで得られていた約9秒のパルスを再確認し、ほぼ一定のスピンダウンが続いていることを明らかにした。結果として、このコンパクト天体がマグネータであるという描像を強化し、それが磁気変形している可能性を論じた。 2. 昨年度に「すざく」、「あすか」、およびNuSTARの公開データを用い、代表的マグネターSGR 1806-20からT=17 ksec の位相変調を発見した。また25年間にPの増加に比例しTも延びていることを見出し、自由歳差運動という解釈を強化できた。本年度はこの豊かな結果の論文化の作業を進めた。 3. これまでに6天体から同様な効果が検出された。昨年度に続き、それらのBt/Bd比を求めることで、時間とともにこの比が増加すること、したがってトロイダル磁場は双極子磁場より長く維持されることを突き止め、その研究成果を内外の研究会で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SGR 1806-20に関する論文は、レフェリーとのやりとりに手間取り、出版がやや遅れている。他方でLS 5039に関する結果は当初の予想を上回るものである。以上を差し引きすると、ほぼ順調に進展したと評価できる。研究遂行おける謝金の支出は、衛星データの一次処理などの補助作業を依頼した結果である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度は本課題の最終年度であり、得られた研究成果の論文公表、および内外の研究会での発表に重きを置く。 予定している論文は以下の3つである。(1) 昨年度に投稿した SGR 1806-20に関する論文を、受理まで持ってゆく。(2) 「あすか」によるLS 5039の観測成果を論文として投稿する。(3) SGR 0501+4516およびRXJ 1708-4009の歳差運動を、論文として投稿し、その中でBt/Bd比の進化を述べる。 研究集会としては、日本天文学会および日本物理学会の定例年会(ともに秋と春)、8月に福島県郡山市で開催される国際天文学連合アジア太平洋地区総会 APRIM2023 (口頭発表に採択済)、ほか数例の国内研究会を予定している。
|
Causes of Carryover |
COVID-19の収束が遅れ、対面開催になると予想していた国内学会 (日本天文学会、2022年9月, 新潟大学) が対面+リモートのハイブリッド形式となった。会場の人数の上限が限られており、対面参加は若手を優先すべきことから、リモートを選択した結果、計上していた旅費が不要となった。これは2023年度に、おもに論文出版費として計上する。
|