2021 Fiscal Year Research-status Report
Study of the relationship between solar wind acceleration and microturbulence by using interplanetary scintillation observations
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21K03640
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
徳丸 宗利 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (60273207)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 太陽風加速 / 惑星間空間シンチレーション / 密度乱流 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽風が如何にして加速されるかは、未だ十分解明されていない重要課題である。これまでの研究から、太陽風の速度Vと密度ゆらぎΔNeの間にはΔNe∝V^α、α=-0.5の関係があることが知られており、磁気波動による太陽風加速機構を支持する事実と考えられている。太陽風加速に寄与するΔNeは微細な空間スケールであり、この特性を飛翔体観測で探ることは困難であった。しかし、この微細な太陽風密度ゆらぎΔNeによって発生する天体電波源の惑星間空間シンチレーション(IPS)を観測すれば、VとΔNeの関係を調査することが可能となる。本研究では、太陽風加速機構を解明するための鍵となるV―ΔNe関係式ついて、IPS観測データを使った2つの解析法から決定し、両者の結果を統合することで正確な知見の獲得を目指す。その解析法は、1)IPS観測で得られた速度データのみを使った計算機トモグラフィー(CAT)解析の結果を飛翔体観測結果に最適化することで、V―ΔNe関係式を決定する、2)IPS観測で得られる速度とg値データを同時にCAT解析することでV―ΔNe関係式を求める。1)のためには、解析を繰り返して実行するため高速な計算機が必要となる。また2)のためには、g値データの長期変動を補正するため観測システムの校正が必要となる。申請者の予備的な解析からは、V-ΔNe関係式は長期変動していることが判っており、その変動と太陽周期活動との関連についても調査する。研究期間の初年度では、解析法1のための計算機を整備し、解析を行った。その初期成果を学会で発表するとともに論文として出版した。また解析法2のために豊川アンテナの調査を実施し、位相・利得校正システムに問題があることをつきとめた。これを解決するため新たな校正システムの開発に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間の初年度では、上記の解析法1で必要となる計算機を導入し、1985~2019年の期間にISEEのIPS観測から得られた速度データをCAT法で解析した。そして、解析で求めた速度データを年毎に飛翔体観測で得られた太陽風速度と比較した。ここで用いた飛翔体データはは地球付近での様々な探査機の観測に基づいたOMNIデータとUlysses探査機のデータである。CAT解析プログラムでは、V-ΔNe関係式ΔN∝V^αが使われている。本研究ではαの値を変化させて、飛翔体観測と最も一致するαを探した。その結果、2008年まで(サイクル22,23)は従来知られていたα=-0.5が最適であるのに対して、それ以降(サイクル24)では同じαの値を使うと100km/s程度のCAT解析の方が飛翔体観測より高くなることがわかった。様々なαについてCAT解析を行ったところ、サイクル24ではα=1.0が飛翔体観測に最もよく合うことがわかった。また、CAT解析と飛翔体観測の食い違いはデータ数の減少などα以外の効果では説明できないこともわかった。そして、最適なαの値を用いて1985~2019年の太陽風速度の全球的分布を決定し、高速風・低速風の緯度依存性、極域太陽風の南北非対称性、大欲極磁場との関係などを明らかにした。これらの結果をJpGU2021で報告するとともに、論文にまとめてAstrophysical Journal誌に投稿・出版した。一方、解析法2のため豊川アンテナの調査を行ったところ、既存の位相・利得校正システムが正常に機能していないことがわかった。このため、新たに位相・利得校正システムを構築する必要があり、今年度は装置の設計や制御信号送信回路の製作を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の第2年度は、サイクル25におけるIPS観測データを取得・解析して、前年度に得たV-ΔNeの関係式に関する知見を検証する。また、前年度から準備している豊川アンテナ用位相利得校正システムを完成させ、実験を行って校正データを取得する。得られた校正データを既存のものと比較し、豊川アンテナの効率の長期変動を評価する。その結果に基づいて、適宜g値データの補正を行った後、速度データとg値データを同時に使ったCAT解析を実施し、V-ΔNe関係式を求める。これを解析法1で求めた関係式と比較して太陽風加速の観点から考察を加える。得られた成果は、学会や研究会で随時報告する。
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Research Products
(4 results)