2023 Fiscal Year Research-status Report
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21K03644
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高橋 芳幸 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (00372657)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 金星大気 / 大気放射 / 放射対流平衡 / 実在気体の状態方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023 年度は, 放射フラックスを高速に計算する k 分布 (k-distribution) 法に基づく放射モデルと実在気体の熱力学モデルを組み合わせて前年度までに構築した鉛直一次元放射対流平衡モデルを用いて, 金星大気の鉛直構造の熱力学的扱いに対する依存性を調べた. 金星の下層大気は, その安定度を見積る際に非理想気体の効果を考慮することが不可欠であることが知られている. それにも関わらず, 従来行われてきた金星大気循環の研究においては, 大気を理想気体として扱ってきた. さらに, 伝統的な地球の気象学の扱いに基づいて, 大気の比熱を定数として扱うことも珍しくなかった. 2023 年度の研究では, 非理想気体の効果が金星大気の鉛直構造にどの程度の影響を与えているのかについて調べた. 本研究の結果として, 金星下層大気の構造を表現する上では, 比熱を定数として扱うことが大きな影響を及ぼすこと, また, 非理想気体として扱う場合に対流不安定な大気が, 理想気体として扱う場合に安定な大気と判定される場合があることが明らかとなった. 対流が生じるか否かは, 運動量や熱や物質の混合に影響を及ぼす. このため, 本研究において, 金星大気の熱力学的扱いが金星大気循環や温度分布, 物質分布に影響を及ぼす可能性があることが示唆されたことは, 今後の金星大気研究の方向性に重要な示唆を与えるだろう.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023 年度に取り組んだ放射対流平衡計算は概ね順調に進展した. 計算は, 学内の計算機を利用して円滑に実施でき, 計算結果は本研究課題の補助金によって購入した記憶装置を用いることで余裕を持って保存することができている. また, 2023 年度に取り組んだ非理想気体の金星大気構造に対する影響に関わる研究の内容は, 本研究課題の補助金を用いて論文として 2023 年度に出版することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
2023 年度に取り組んだ, 金星大気の鉛直構造に関する研究により, これまでに取り入れていなかった過程が大気構造に影響している可能性が示唆された. 今後はこの過程について考察を進める予定である.
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Causes of Carryover |
2023 年度に行った研究の結果, これまでに考慮していなかった過程の重要性が示唆された. 2024 年度に, それに関する研究を継続する予定である.
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