2021 Fiscal Year Research-status Report
アンモニアの凝結・化学反応・水溶液の詳細計算から迫る木星大気の雲対流構造
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21K03651
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Research Institution | Matsue National College of Technology |
Principal Investigator |
杉山 耕一朗 松江工業高等専門学校, 情報工学科, 准教授 (60463733)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 健介 九州大学, 理学研究院, 助教 (10192668)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 木星大気 / 雲対流 / 雲解像モデル / 惑星大気 / 数値モデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアンモニアの凝結・化学反応・水溶液の詳細計算の実現と,これを組み込んだ雲解像モデルによる動的数値シミュレーションによって,厚い雲に覆われた木星の大気構造に迫ることを目的とする. 当該年度はアンモニアの詳細計算モジュールの設計および開発を行った.詳細計算モジュールは多成分多相系の取り扱いが可能となるように,ギブス自由エネルギー最小化法に基づいて定式化と実装を行うことにした.この方法を採用したことで,アンモニアの凝結物・化学反応生成物・水溶液の存在度を平衡大気組成として一度に解くことができるようになった.実際の計算では,温度と圧力を固定し,ギブス自由エネルギーが最小になるような組成をニュートン法によって反復的に計算している.なお,水溶液は理想溶液を仮定することにした. 開発した詳細計算モジュールの単体テストを段階的に実施した.まず始めに,1成分多相系での計算を行い,水やアンモニアの相図を正しく計算できることを確認した.次に,多成分多相系であるが,化学反応は生じず,水溶液のみ生じるような場合について計算を行った.得られた結果と純物質の飽和蒸気圧を比較し,物理的な矛盾のないことを確認した.加えて,金星大気に見られるような硫酸水溶液についても計算を行い,金星の過去の研究で得られた水溶液の雲の知見と矛盾しない結果が得られることや,多種多様な大気成分を扱うことのできる汎用性の高いプログラムとなっていることを確認した.最後に多成分多相系で化学反応と水溶液の生じる条件下での計算を行った.この段階で改善点が発見されたため,現在は課題解決に向けてプログラムの改修を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の肝となるアンモニアの詳細計算モジュールの開発は進んだが,単体テストとその性能確認が研究途上である.
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Strategy for Future Research Activity |
翌年度は,継続事項であるアンモニアの詳細計算モジュールの開発に注力し,多成分多相系で化学反応と水溶液の生じる条件下での計算を可能とする.それを終えた後に,開発したアンモニアの詳細計算モジュールを,我々がこれまで開発してきた雲解像モデルへ組み込む.それにより,雲解像モデルによる動的数値シミュレーションの予備的実験に着手する. 翌々年度以降は,計算領域を2次元とし,アンモニアなどの凝結成分の存在度をパラメタとした動的数値シミュレーションを多数実行する.個々の雲の生成消滅の様相,ならびに雲の生成消滅が繰り返された結果として実現する温度・成層構造,物質分布,流れ場を掌握し,雲対流構造の特徴ならびにアンモニア蒸気の空間分布を凝結成分の存在度というパラメタ上に位置付ける.最終的には動的数値シミュレーションで得られたパラメタ依存性を従来の理論的研究や探査機などの観測結果と比較し,厚い雲に覆われた木星の大気構造に迫ることを目指す.
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Causes of Carryover |
購入を計画していた計算機パーツが発売延期となってしまい,購入計画の見直しを行うことになった.また,コロナ禍のために予定していた学会や研究打合せのための出張が取りやめになった.コロナ禍の行動制限が継続することを勘案し,繰り越し予算は計算機資産の拡充に使用する予定である.
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Research Products
(2 results)