2021 Fiscal Year Research-status Report
Improvement of city-scale LES model and its applications
Project/Area Number |
21K03656
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
日下 博幸 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (10371478)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Doan QuangVan 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (80869264)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | LES / 都市気候 / 大気境界層 / 暑熱環境 / 数値モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の都市の暑熱環境悪化に伴い, 都市気象の基礎研究と科学的知見に基づく暑さ対策の検討が重要視されている. 私たちの研究室ではこのようなニーズに応えるべく, 大規模乱流の直接シミュレーション(LES)に基づく都市街区気象シミュレーションモデル(City-LES)を独自に開発してきた.本研究では,このモデルの初期条件・境界条件部分を改良し, より多様な条件の高精度なシミュレーションの実現を目指す. 令和3年度は主に, (1) 観測値と放射モデルを用いた地表面温度スピンアップ機能の実装, (2) 乱流の情報を与える境界条件の試験的な実装を実施した. (1)のスピンアップ機能は, 大気の状態を観測データ等から簡易的に与え, 放射・地表面モデルのみを動作させ, 空間詳細な地表面温度・地中温度の初期値を作成できるものである. これにより, 例えば夜間ヒートアイランドのような建物や地面の蓄熱効果が重要なシミュレーションをより簡単に行うことが可能となる. このような建物や地面の蓄熱効果を考慮した地表面に関する初期値は, 対象とする日時より前から長い時間のシミュレーションを行わないと取得しにくいものである. そのため, そのような高計算コストの計算を省略できるこの機能は, City-LESの効率的な運用に重要な要素となる. (2)の境界条件は, 乱流を生成するための領域を本計算領域の風上側に設置する方法と, 平均的な大気の情報から乱流を診断的に生成する方法を実装した. いずれの方法も, 乱流生成のために大きな領域をとって計算をする従来手法よりも計算コストは低くなる. これらの境界条件を用いて試験的に都市街区気象シミュレーションを行った結果, 特に混合層の成長を伴う(熱対流が活発な)場合に乱流の与え方を工夫する必要があることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期条件の開発はほぼ当初計画通りに進んでいる. 具体的には, AMeDAS等の大気の観測値を与えて初期値を作成するシステムの実装は終了している.残る開発作業は、簡易な都市キャノピーモデルを用いてこの観測値をよりLESに導入しやすくする部分だけである. 境界条件の開発は, 当初計画以上に進展している.2年目に実施予定であった境界条件のうちいくつかの試験的な実装を行い, テスト的であるが解析を開始することができた. この解析から, 特に熱対流を含む際の乱流の与え方に関する課題を見出した. 両者を総合して, おおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
初期条件の開発は, 簡易な都市キャノピーモデルを用いた大気や表面温度の導入部分の開発と, ユーザ視点での使用しやすさの検討を実施する. また, この機能を用いた場合の地表面温度の再現精度も確認する必要があると考えられるため, 熱画像などを利用した検証実験も行う予定である. また, 熱対流が卓越するような場合でも適用可能な新たな境界条件の開発とそれを用いた解析を進める予定である. 機械乱流が卓越するような境界層を対象に同様の問題を議論している既存研究がいくつかあるので, それらのアイデアを拡張して熱対流が卓越する場合の問題に対応していく予定である.
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Causes of Carryover |
参加した学会がオンラインになり, 旅費が発生しなかった. 本年度の解析から, 実装するべき条件にまだ課題があることが判明し, それに関する学術論文等を新たに投稿する予定である.この論文掲載料等のための次年度予算が必要である.
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