2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the enhancement mechanism of typhoon-induced remote precipitation
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21K03657
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齊藤 和雄 東京大学, 大気海洋研究所, 客員教授 (70391224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 耕介 琉球大学, 理学部, 准教授 (10634123)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 台風 / 遠隔降水 / 非地衡風 / 2次循環 / 雲解像モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
台風が南海上にある時に日本本土で大雨が降ることがあり、有名な事例としては平成12年9月の東海豪雨がある。世界的にも同様な現象がPredecessor Rain Event (PRE)として知られている。台風による遠隔降水は、防災上重要なテーマであるが、降水強化のメカニズムについては必ずしも明瞭に理解されていない。本研究では、台風からの北向き水蒸気輸送やその降水への影響、上層ジェットとの相互作用によって生じる非地衡風の2次循環の影響、遠隔降水における台風の役割や遠隔豪雨を起す台風の特徴などについて、数値モデル実験や統計解析などにより調査し、台風による遠隔降水強化メカニズムを解明する。 令和3年度は、研究計画の初年度として、①2009年台風第18号が日本の南海上にある時に出現した北向き非地衡風による上層加湿が西日本の遠隔降水にどのような影響を与えるかについてと降水増大に係る雲物理学的機構を雲解像モデルで調べるとともに、非地衡風2次循環の降水への影響を調べるための数値実験の準備を行った。また②強い台風の接近時に、対流圏上層の偏西風や非地衡風が強められていることを、2010年から2020年までの11年分の民間航空機データのコンポジット解析に基づいて観測的に確かめた。さらに③日本での9月の台風遠隔降水の多数事例について、再解析データを用いた多数例の調査を行い、遠隔降水発生のための力学的メカニズムについて、Qベクトルや前線形成関数を用いた解析を行なった。解析対象は自身の統計解析から継続して、台風が日本に接近している時に遠隔で大雨が発生した事例と発生しなかった事例、台風が日本に接近しておらず主に秋雨前線に伴った大雨事例の3パターンに分けて行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①上層加湿による降水増大の雲物理学的機構を水平格子間隔2kmの雲解像モデルで調べ、台風に伴う北向き非地衡風による上層加湿が、中上層での雪の生成や上昇流の大きさの変化を通じて、遠隔降水量を変化させることを示し、論文投稿を行い、受理の目途をつけた (Saito, K., T. Matsunobu, and T. Oizumi, 2022: Effect of upper-air moistening by northward ageostrophic winds associated with a tropical cyclone on the PRE enhancement. SOLA, accepted)。また非地衡風2次循環による大規模上昇流の降水への影響を調べるための数値実験の検討を行った。 ②強い台風の接近時に、対流圏上層の偏西風や非地衡風が強められていることを、2010年から2020年までの11年分の民間航空機データのコンポジット解析に基づいて観測的に確かめ、学会発表を行った。 ③遠隔降水を引き起こした台風の特徴や発生環境場に関するこれまでの解析結果に、Qベクトルや前線形成関数を用いた力学的メカニズムの解析結果を加えて、投稿論文としてまとめた (Kodama, S., and M. Satoh, 2022: Statistical analysis of remote precipitation in Japan caused by typhoons in September. J. Meteor. Soc. Japan, in revision)。
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Strategy for Future Research Activity |
①台風に伴う非地衡風成分の3次元的な構造やその時間変化の解析を行うとともに、力学的要因による非地衡風2次循環によってもたらされる大規模上昇流の降水への影響についての数値実験に取り組む。 ②台風接近時の数値実験およびデータ解析を継続し、流れ場の慣性不安定や対称不安定といった力学的安定性の解析を進める。 ③台風と高気圧周りの水蒸気の分布について解析を行い、遠隔降水時の水蒸気の寄与の理解へとつなげる。一般的な高気圧の張り出しの傾向について解析を行い、次に台風接近時の場合へと絞った解析から、遠隔降水時の高気圧の役割の理解へとつなげる。
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Causes of Carryover |
令和3年度末に投稿した二つの論文(Saito et al. 2022, SOLA; Kodama et al. 2022, JMSJ)の発刊が令和4年度になったため、初年度に計上していた投稿料を次年度に使用する。また新型コロナウイルス感染症の影響で、令和3年度はオンライン会合が増え、旅費支出が予定よりも少なかった。次年度に積極的に成果発表に努める。
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Research Products
(8 results)