2021 Fiscal Year Research-status Report
Meteorological research on dust hotspots by using Himawari-8 Dust RGB and lidar network
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21K03659
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
甲斐 憲次 名古屋大学, 環境学研究科, 名誉教授 (50214242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神 慶孝 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球システム領域, 主任研究員 (30749718)
河合 慶 名古屋大学, 環境学研究科, 研究員 (60823268)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 黄砂ホットスポット / ひまわり8号ダストRGB / ライダー観測網 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゴビ砂漠は、アジア大陸における黄砂の主要な発生源である。本研究では、ひまわり8号ダストRGBデータとモンゴルに展開するライダー観測網を活用して、黄砂のホットスポットを解明し、日本における大規模な黄砂の予測に資することを目的とする。今年度は、コロナ禍のため海外渡航が不可となり、既観測データの解析と数値シミュレーションを実施した。 2019年4月28日、首都・ウランバートルから南部ゴビ砂漠に位置するダランザドガドまで直線距離600㎞の移動観測の最中、偶然にも、「ダストの壁」をもつ典型的なダストストームに遭遇した。ヘッドの高さは約600 mで、その構造から重力流によって引き起こされたと考えられる。ダストストームの中に入り、エアロゾルと気象の観測を行った。ひまわり8号Dust RGBの画像を解析すると、ダストストームは地形的な収束域で発生していた。この領域は、3つの山脈、すなわちハンガイ山脈、アルタイ山脈、ゴルバン・サイハン山脈に挟まれた二つの谷筋の気流が収束する場所である。研究成果は、日本気象学会英文レター誌SOLAに発表し、朝日新聞デジタルの記事「黄砂の原因、ゴビ砂漠の砂嵐に突入 偶然遭遇した研究者が動画撮影」で一般向けに紹介されている。 事例解析と並行して、全球エアロゾルモデルを用いた黄砂の発生と特性に関する研究を行った。数値実験では、1)黄砂の発生感度が臨界摩擦風速に大きく依存すること、2)地形的に高高度に舞上りやすい黄砂は、氷晶核として有効に機能することがわかった。モンゴルのダランザドガド気象台で実施したダスト係留気球とシーロメーターの同時観測(2016年と2018年)より、消散係数-質量変換係数 MECFを評価した。世界各地で実施された先行研究と比較すると、発生源地域から遠く離れるほど、MECFの値は小さくなる傾向がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のため海外渡航が不可となり、今年度は、既観測データの解析と全球エアロゾルモデルによる数値シミュレーションを重点的に実施した。リモートで開催した第1回の研究集会(6月)では、科研費の概要とゴールを確認し、既観測データの解析(2013-2019年)などの進捗状況を報告した。第2回の研究集会(3月)では、ダスト係留気球に搭載されたパーティクルカウンターとシーロメーターの同時観測から、消散係数-質量変換係数 MECFを評価する方法を集中的に議論した。 甲斐と河合は、2019年4月、ゴビ砂漠で「ダストの壁」をもつ典型的なダストストーム遭遇し、観測データをもとに事例解析を行った。研究成果は日本気象学会英文レター誌SOLAに発表し、朝日新聞デジタル「黄砂の原因、ゴビ砂漠の砂嵐に突入 偶然遭遇した研究者が動画撮影」で一般向けに紹介されている。ダランザドガド気象台とマンダルゴビ気象台に設置した2台のシーロメーターに関しては、保守の必要があり(ヒューズやバッテーリーの交換、光学系の清掃など)、メーカ―および現地気象台と連絡を取りながら、次年度以降の保守の方法を検討した。 河合は、全球エアロゾルモデルを用いた黄砂の発生と特性に関する研究を行い、1)黄砂の発生感度が臨界摩擦風速に大きく依存すること(SOLA)、2)地形的に高高度に舞上りやすい黄砂は、氷晶核として有効に機能すること(JGR)を明らかにした。 神・河合・甲斐は、衛星ライダーCALIOPとひまわり8号ダストRGBを用いて、ダストストーム発生時の黄砂の高度分布と水平分布を解析した。ダスト係留気球とシーロメーターの同時観測より、消散係数-質量変換係数 MECF (Mass-Extinction Conversion Factor)を評価した。次年度は、このMECFを用いて、ゴビ砂漠から舞い上がる黄砂の量を見積る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実施した既観測データの解析と数値シミュレーションにより、コロナ禍にもかかわらず、本科研費を推進することができた。来年度は次の3つの課題に取り組む:①消散係数-質量変換係数 MECFを用いた、シーロメーター・ライダーによる黄砂量の推定、②植生指数がダスト発生臨界風速に及ぼす影響、③衛星ライダーCALIOPとひまわり8号ダストRGBを用いた黄砂の高度分布と水平分布。 一方、2019年から始まるコロナ禍で、モンゴルに展開するシーロメーターとライダーの保守が一切行われず、現地ライダー観測の維持が困難な状況となっている。このような状況を打開するため、関連するプロジェクト(推進費など)と連携をとりながら、現地ライダーを保守して、質の高い観測データを得たい。このため、2022年の夏季か秋季に、モンゴル出張を計画している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、モンゴル出張が不可となり、外国旅費が余った。次年度使用する予定である。
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Research Products
(10 results)