2021 Fiscal Year Research-status Report
高頻度高密度観測データ活用のための多重スケールを考慮した変分法データ同化の確立
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21K03667
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
藤田 匡 気象庁気象研究所, 気象予報研究部, 室長 (50847283)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 多重スケール / データ同化 / ウェーブレット / ハイブリッド四次元変分法 / 流れに依存する背景誤差 / 観測誤差相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
レーダーや衛星などのリモートセンシングによる高頻度高密度の観測データは、同時に広がりを持って分布しており、大気に関する様々なスケールの情報が含まれる。これらの情報を数値予報でより有効に活用するため、変分法データ同化において多様なスケールを扱うための高度化に取り組んでいる。2021年度は、まず、ハイブリッド四次元変分法に実装した単純な矩形ウェーブレット制御変数に基づいて、より実用性を高めるため、滑らかなウェーブレット変換に定式化を拡張した。スペクトル空間でのウェーブレットの定式化を採用し、2次元に拡張して平面でのスケール成分の分解に対応した。また、拡張した定式化に基づく制御変数をハイブリッド四次元変分法に実装した。波数分解能を高くとり、背景誤差のスケール間相関も考慮した。また、多数メンバーのアンサンブルを用いてサンプリングエラーの特性を調査し、スケールごとの背景誤差に適用する局所化を検討した。実装したシステムで、札幌、福岡、沖縄と、気象状況の異なる場所での一点観測同化実験、及び、それぞれの場所の単一レーダーサイトによるドップラー速度の同化実験を行った。これらの実験による解析インクリメント(解析値-第一推定値)では、スケールごとの局所化を反映して遠方ほど大きいスケールの成分が卓越する結果が得られた。また、対象観測種別を衛星の大気追跡風にも拡張し、統計的な診断に基づいて水平、鉛直、時間方向の観測誤差相関をモデル化してこれを実験システムに組み込んだ。拡張したシステムにより、大気追跡風の間引き間隔を変えた実験、観測誤差相関の考慮の有無を変えた実験を行い、解析インクリメントのスケールごとの応答を調査した。従来の制御変数と比較して、ウェーブレット制御変数を用いたハイブリッド四次元変分法では、観測データの持つ情報のスケール依存性が解析インクリメントに、より明瞭に反映されることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、2021年度は単純な矩形ウェーブレットによるスケール依存同化の検討(単一レーダーサイトドップラー速度同化実験)、アンサンブルによる背景誤差のノイズ特性調査、2022年度はより実用的な滑らかなウェーブレットへの拡張、衛星などレーダードップラー速度以外の観測データへの観測種別の拡張、2023年度は拡張したシステムでの性能調査を計画していた。 2021年度は、実用的な調査が可能な実験システムの整備を優先し、矩形ウェーブレットの実験システムに基づき、2022年度に計画していた滑らかで実用的なウェーブレットへの拡張の定式化及び実装を先行して行った。多数メンバーのアンサンブルを用いた、背景誤差におけるサンプリングエラーによるノイズの特性調査は、当初予定通り実施した。単一サイトのドップラー速度同化実験は、上記の拡張したシステムで3つのレーダーサイトについて行った。また、2022年度に計画していた観測種別の拡張として、衛星による大気追跡風の同化への対応を行った。大気追跡風の観測誤差について時間空間相関特性を統計診断してモデル化し、ハイブリッド四次元変分法に組み込んだ。大気追跡風、ドップラー速度について、観測間引き間隔、観測誤差相関の有無によるスケール依存同化の応答を調査した。 以上の状況から概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、この拡張したシステムを用いて、感度実験などを行い、スケール依存同化の特性、性能調査をさらに進める。
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Causes of Carryover |
定式化の整備、システムの構築及び実験の実施を優先し、ウェーブレット制御変数に関する論文による成果発表は次年度以降とした。また、新型コロナウィルスの影響により、多くの研究会合がオンラインでの開催となった。このため、次年度使用額が生じた。2022年度は、統計的手法や感度実験に基づく本課題の実験結果を保存するストレージ装置の整備や、成果発表などに使用する計画である。
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