2023 Fiscal Year Research-status Report
A large-scale magmatic hydrothermal system acting on multiple volcanoes
Project/Area Number |
21K03680
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
神田 径 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (00301755)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 草津白根山 / 比抵抗構造 / マグマ / 熱水系 / 志賀高原 / GNSS |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に取得した22ヶ所の広帯域MT法データの解析を行った。解析では、志賀火山周辺の浅部構造モデル、および先行研究で得られた草津白根山周辺の広帯域MT法データと統合した深部構造モデルの2種類のモデルを構築した。その結果、浅部構造モデルでは、草津白根山で見られるような極めて低い比抵抗値を示す領域は推定されなかったものの、鉢山を中心とする志賀火山の地下に15~40Ωmの低比抵抗領域が見いだされた。この低比抵抗領域については、今のところ、過去のマグマ活動に伴うマグマ性流体による変質を受けた粘土層だと解釈している。深部構造モデルでは、草津白根山~志賀火山にかけての広域の比抵抗構造モデルが得られ、全体的な傾向は先行研究と変わりがなかった。しかし、先行研究で解像度の低かった志賀火山周辺では、鉢山直下の低比抵抗領域が深部の海抜下8km付近を中心とする20Ωm以下の低比抵抗領域まで20~50Ωm程度の比抵抗値で繋がっているようなモデルが得られた。この深部低比抵抗領域は、先行研究により部分溶融したマグマ溜りであると解釈されており、草津白根山と志賀火山はマグマ溜りを共有していることが改めて示唆された。
草津白根山周辺の広域GNSS観測については、本年度も10月6日~16日にかけて、繰り返し観測点6ヶ所について、3か所ずつ2回にわけて測定を実施した。最終年度にあたるため、2020年以降の繰り返し観測データについて、国土地理院の電子基準点(長野栄)を基準として改めて解析を行った。その結果、地殻変動に一定の傾向がみられることはなく、先行研究で示された膨張源の位置に圧力源を仮定したとしても、データは説明できなかった。ただし、2021~2022年にかけては、多くの観測点で沈降傾向がみられ、水平方向では北西から北北東方向への変動が支配的であることから、なんらかの地盤変動が観測された可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
志賀高原および高山村における比抵抗構造調査については、前年度に取得した地磁気地電流法による測定データの本格的な解析を行った。その結果、志賀山周辺の浅部構造がはじめて明らかになり、草津白根山周辺の広域で取得されたデータとの統合解析からも、先行研究を支持するような結果が得られている。また、地盤変動観測についても、例年実施しているGNSS繰り返し観測を10月に実施したことに加え、2020年以降のデータについての総括的な解析を行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
草津白根山を含めた志賀山周辺の比抵抗構造の解析については、ほぼ終了しており、今後は、投稿論文の執筆を進める。得られた比抵抗構造の特徴が偽像でないかどうか感度テストにより確認するなど、論文執筆上必要な作業を行う。
GNSS観測については、毎年同じ時期に実施している繰り返し観測を継続し、引き続き深部地盤変動源の検出を試みる。
|
Causes of Carryover |
初年度に計上していた比抵抗構造調査の実施のための許認可申請プロセスの一部の専門業者への外注業務について、日程的な問題から許認可申請を全て研究代表者が行ったことにより大きな未使用額が生じた。2年目には、比抵抗構造調査に使用するリチウムイオンバッテリーを、他経費により購入したことにより未使用額が生じた。これらが持ち越されている。次年度には、比抵抗構造調査の結果を投稿論文として出版する計画があり、このための英文校正費や成果発表の旅費として用いる予定である。また、研究期間の延長が認められたため、草津白根山の広域GNSS観測も実施予定であり、このための消耗品・旅費に充てる予定である。
|