2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K03683
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
青木 かおり 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 客員研究員 (30513163)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 火山灰 / テフラ / 津軽海峡 / 渡島半島 / 角閃石 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度までの調査では、下北半島の野辺地町目の越で角閃石を含有するテフラ(火山灰)を2か所で発見し、岩石学的特性に加えて両地点でのテフラ直下の有機質堆積物の14C年代測定値が約6300年前であることまで確認をした。2022年度は、目の越地点の上記テフラ層が含有されている有機質堆積物の掘削調査を別途助成金を確保して遂行し、さらに有機質堆積物が埋積している海食崖の基盤地質の調査を行った。その結果、本地点における海成層中に介在しているテフラ層の年代値が約100万年前とわかった。これらの成果は、本地点における古地理および古環境変遷をまとめるうえで、きわめて有用な情報といえる。 さらに、2022年8月末~9月初めに津軽半島の最北端と、北海道道南地域(渡島半島、亀田半島)の海岸沿いの完新世堆積物を中心に調査を行ったところ、これまでに記載されていない角閃石を含有するテフラが複数介在していることを発見した。さらに、2022年10月には渡島半島で再度野外調査を行ったところ、角閃石を含有するテフラを複数発見した。これらのテフラの給源火山を特定するために、2022年12月と2023年3月に火山ガラスの主元素組成分析を行い、現在そのデータを精査しているところである。これらのテフラ層は風化が進んでおり、一部のテフラ試料では火山ガラスの含有量が著しく乏しいため、給源火山の推定および広域対比のための対策を検討中である。 津軽海峡から採取された海底コア中のテフラ分析を行い、亀田半島の調査で採取したテフラとの対比を検討しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東北地方北部(主に青森県)と北海道道南地域においては、角閃石を含有しているテフラとして、十和田八戸テフラと濁川テフラの2つのみを対比対象として検討し、より若い層準で見つかった場合でも、両テフラの再堆積として解釈しているケースが多い。しかしながら、本研究では当該地域において上記の2テフラ以外にも角閃石を含むテフラが存在することを発見しており、1.5万年前以降のテフラ層序を大きく進展させる可能性が出てきた。 文献による調査を参考に、角閃石を含有したテフラを供給した火山として渡島大島を対象に検討していたため、渡島半島の日本海側における調査で複数の角閃石含有テフラの試料を得たことは大きな進展である。 一方で、亀田半島においても角閃石含有テフラが見つかったが、この火山ガラスの化学組成が以前から報告されている濁川テフラとは異なることから、当初は想定していなかった給源火山とその降灰年代について再検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
下北半島の野辺地町目の越における研究成果は、いくつかの補完するデータを得ることで、今年度中に論文として投稿する予定である。 津軽半島の最北端と渡島半島の日本海側における調査で発見した複数の角閃石含有テフラの試料は、風化が進んでおり火山ガラスの含有量が極めて少ない。そのため、給源火山の識別のためには、火山ガラスと鉱物類を分ける重液分離作業を行い、火山ガラスの化学組成に加えて、ふんだんに含まれている角閃石類の化学組成を分析しそのデータによる対比を検討している。 また、津軽半島の最北端と亀田半島における角閃石含有テフラの降灰層準についは、土壌の14C年代値を測定するために、試料採取に行く予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度に行く予定だった野外調査について、感染症対策のため出張を控えて調査費用を繰り越したこと、さらに2022年度調査で調査補助を依頼する予定であったが、こちらも上記と同様の理由で単独での調査となったため、使用金額に余剰が生まれて次年度使用に持ち越すことになった。 持ち越した金額は、2023年度調査で新たに得る堆積物試料の14C年代測定など専門業者への依頼に使用する予定である。
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