2022 Fiscal Year Research-status Report
GIAモデリングで探る最終間氷期の氷床量変動-将来の高精度海水準予測に向けて-
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21K03685
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
奥野 淳一 国立極地研究所, 先端研究推進系, 助教 (00376542)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 海水準変動 / 地殻変動 / 最終間氷期 / 南極氷床 / アイソスタシー |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は,最終間氷期へ至る海水量の増加に対する要素(増加率,最大海水量,高海水準期間)に関して,パラメタライズ可能なGIA数値計算モデルの構築を行った.昨年度の開発によって高速化されたGIA数値計算モデルは,最大3の氷期・間氷期サイクルの地球表層荷重を仮定し海水準変動を再現するといった仕様となっていた.しかし,本研究課題の最終目的は,一つ前の間氷期である最終間氷期へ至る海水量の増加(ターミネーション2)に対する変数要素について,地球内部粘性構造を含めたパラメータ依存性を詳細に検証することである.そこで,昨年度の開発したGIA数値計算モデルのコードをベースにして,高解像度でパラメータ依存性を検証可能とするための開発を行った.しかし,現状のモデリングコードをベースとしたとしても,最終目標にむけて,各種パラメータの依存性について高時間解像度での探査を可能とする仕様へ拡張すると,これまでより大幅に計算時間を必要とするために,広範なパラメータ領域での各依存性の検証が実質的に困難になる状況であった.そのため,昨年度実施したモデルの抜本的な高速化および高精度化の改良を今年度も継続して行った.これまでの計算結果と相互参照しながら開発を行った結果,本研究対象として十分な結果が得られる程度の高時間分解能で計算を行っても,大幅に計算時間の短縮が見込まれる数値モデリングコードの開発に成功した.当該年度で開発したGIA数値計算コードを用いた試験研究も行い,南極における地殻変動の数値シミュレーションおよび,全球における最終間氷期の海水準高度再現を行った.南極におけるGNSS・絶対重力観測値と比較や,過去の氷床域から離れた地域における最終間氷期海水準高度との比較を通じて,地球内部粘性構造および氷床融解史のパラメータ依存性の検証に関して予備的結果が得られたので,各種学会,研究集会にて進捗状況を発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に実施した,GIA数値計算モデリングコードの大幅な改訂が成功した.また,計算時間短縮や高時間分解能での数値実験を可能とする改良について,当初の計画で見込んだ進捗が得られた.さらに,その計算コードを用いて最終間氷期海水準高度の再現にも成功し,すでに予備的結果を得ている.また,本課題で最終的に開発を予定していた計算コードが概ね完成し,本研究課題での数値実験を展開できる見通しが十分にたった.一方,データベース構築については,技術補佐員の雇用が最終月の一月のみだったため,次年度に継続してとりかかる予定となった.
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に実施できなかったデータベース構築を中心に手がけ,モデリングコードの最適化,および氷床力学モデルからの入力を可能とするモデル開発を行う.当該年度中にデータベース構築を進める十分な期間での技術補佐員雇用ができなかったため,次年度ではできるだけ早く該当人材の確保を行い,データベースを完成させる.最終年度のため,今年度完成した計算コードを使用した数値計算結果を蓄積し,数値的特徴をまとめ,観測データとの比較を通じて理論的に解釈し,最終間氷期の海水準高度と融解領域の起源を突き止める方法論を確立する.成果公表のための学会発表,論文投稿を行う.
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Causes of Carryover |
次年度使用額として生じた額は,本来人件費として計上予定の予算であった.しかし,今年度については,雇用する技術補佐員の選定に際し,必要な技術等要件を満たす人材の雇用が年度の終盤になってしまい,雇用した技術補佐員がデータベースを完成させるまでの必要十分な雇用期間の確保ができなかった.このため,当初予定していた技術補佐員雇用費の一部が次年度使用額として今回生じた. 今年度完成予定であったデータベース構築のための人材を早期に確保し,次年度前半までに,データベース完成までの十分な雇用期間を確保した上で技術補佐員を雇用し,そのための人件費として充当する.さらに次年度後半では,研究成果公表のために,論文投稿料,学会発表などに必要な経費を執行する予定である.
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Research Products
(10 results)