2022 Fiscal Year Research-status Report
観測点1点だけからの地震波動伝播の情報抽出:地震動即時予測の高度化に向けて
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21K03689
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
小寺 祐貴 気象庁気象研究所, 地震津波研究部, 研究官 (80780741)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地震動即時予測 / 緊急地震速報 / 機械学習 / 地震動 / 波動伝播 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,1観測点の波形から波動伝播方向を直接推定する深層学習モデルを構築した. 対象観測点をKiK-netひたちなか(IBRH18)の地上点として手法の検証を行った.2010年1月から2022年7月までに観測された波形を使用して学習用のデータセットを生成した.教師データとなる波動伝播方向は観測点から見た震央方位に等しいとし,深層学習モデルはGRU(Gated Recurrent Unit)と全結合層からなるネットワークを採用した. 学習済みモデルをテストデータに適用したところ,以下の傾向が見られた:(1)理論P波到達後2秒までの波形を入力した時点では,約4割の事例が±30°以内の精度で,約6割が±45°の精度で伝播方向を求められた.(2)さらに後続の波を入力していくと,伝播方向の推定精度が徐々に悪化していくが,理論P波到達後10秒時点では,±30°以内の精度で求まる事例が約1割,±45°の精度の事例が約3割あった.これらの結果は,後続波には到来方向が様々な多重反射や多重散乱の波が多く含まれているため伝播方向の推定は難しいものの,波形全体の形状を学習させることで,P波初動を陽に検測することなく伝播方向をある程度推定することが可能であることを示している. また,連続して地震が発生した際の挙動を見るため,2つのイベント波形を重ね合わせて疑似的に連続地震の事例を作り出し,学習済みモデルによる伝播方向推定を試みた.先行イベントの波形振幅が大きい事例では先行イベントの伝播方向しか推定できなかったものの,後続イベントの波形振幅が大きい事例では,先行イベントと後続イベント両方の伝播方向が推定可能であった.従って,後続イベントの揺れが大きいシナリオにおいては,本手法は連続地震時にも適用可能であることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標としていた,波動伝播方向を直接推定する深層学習モデルの構築・評価を実施することができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
波動伝播方向を直接推定する深層学習モデルの更なる改良を進めるとともに,具体的な地震動即時予測手法と組み合わせることで,地震動予測精度の面から同モデルの導入効果を定量的に検証する.また,伝播方向以外の物理量の推定にも着手する.
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Causes of Carryover |
次年度以降における学会や論文での研究成果発表の費用に充てることとしたため.
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