2022 Fiscal Year Research-status Report
ウラン―トリウム放射非平衡による九州火山の成因の研究
Project/Area Number |
21K03695
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中井 俊一 東京大学, 地震研究所, 教授 (50188869)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三好 雅也 福岡大学, 理学部, 教授 (50557353)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 阿蘇火山 / ウランートリウム放射非平衡 / 地殻同化作用 / ザクロ石 / ジルコン / 沈み込み火山 |
Outline of Annual Research Achievements |
阿蘇,霧島,開門など九州の諸火山で噴出した玄武岩の,238ウラン-230トリウム間の放射非平衡の分析を続けてきた.伊豆弧などの沈み込み地域の火山での火成岩と異なり,(230Th/238U)の放射能比が1より大きくなっている試料が殆どであることを確認した.この原因について,阿蘇火山の試料を中心に考察した.4千年より後に噴火した試料では,ウラン/トリウムの濃度比が,二酸化ケイ素の濃度に従って,49%から51%の区間で低下し,それ以上の区間ではほぼ一定になることが明らかになった.また(230Th/232Th)の放射能比が,それぞれの区間で,増加,減少し,ふたつの変化が合わさって放射非平衡を生み出していることが明らかになった.玄武岩マグマから晶出する鉱物では,ウラン/トリウムの濃度比を大きく変化させる鉱物は考えにくいため,地殻の同化作用の影響を受けていると推察している.希土類元素のランタン/イッテルビウムの濃度比にも同様の変化が認められた.公開されているマグマ溜まりの化学進化のシミュレーションソフトウェアを用いて,地殻の同化作用により,観測された濃度比の変化が再現できるかを検討している.地殻中のザクロ石やジルコンが地殻溶融に関与すると,上記の観測結果が生じる可能性がある.地殻のジルコンが関与した場合,ジルコンの主成分元素である,ハフニウムの同位体比が,噴出した溶岩に影響を与える可能性があるため,同位体比分析を行ったが,二酸化ケイ素濃度の変化によるハフニウム同位体比の変化は認められなかった.これらの情報を考慮して,地殻同化のプロセスを検討している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
考察に必要な地球化学データをほぼ取得できた.放射非平衡の原因の解析に進んでいる.
|
Strategy for Future Research Activity |
阿蘇火山試料の解析を進めるとともに,他の九州の火山との比較も行い,研究をまとめる予定である.
|
Causes of Carryover |
次年度にクリーンルームのフィルター交換を予定している.この費用を確保するため,次年度に一部の経費を繰り越した.
|