2021 Fiscal Year Research-status Report
高圧下における鉄ー軽元素混合液体の結合状態と不混和に関する第一原理分子動力学計算
Project/Area Number |
21K03705
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
大村 訓史 広島工業大学, 工学部, 准教授 (90729352)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 液体鉄混合系 / 3元系 / 電子状態計算 / 分子動力学法 / 結合状態 / 高圧物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、2種類の軽元素を含む液体鉄合金の高圧下における不混和性を解明する目的で、第一原理分子動力学法に基づく計算機シミュレーションを行っている。本年度の主要な研究成果は以下の通りである。
1) 140 GPaの圧力下における液体 Fe-Si-O混合系のシミュレーションから、2種類の軽元素が入った系においても、液体Fe-Si混合系、液体Fe-O混合系と同じように、ケイ素は”置換型”のサイトに、酸素は”侵入型”のサイトに存在することが分かった。 2)液体Fe-Si-O混合系の結合的性質を詳しく調べることで、Si-OとSi-Siには、共有結合的相互作用が存在していることが分かった。特に、Si-O結合は、原子の電荷にも影響を与えており、酸素と結合することでケイ素の電荷が正の方向にシフトしていることが分かった。つまり、酸素と結合してないケイ素と酸素と結合しているケイ素の電荷には明確な違いがあり、酸素と結合してる電荷の方がより高い電荷をもつことが分かった。また、Si-O間の共有結合のライフタイムを約0.5 ps程度と見積もることができた。Si-Si結合のライフタイムは、それより長く約1ps 程度であることが分かった。 3)Fe-Si-O混合系に加え、液体Fe-H-O、Fe-C-O、Fe-S-O混合系に対してシミュレーションを行い、構造的性質を詳しく調べた。液体 Fe-Si-O混合系と同様に、硫黄は液体鉄の”置換型”のサイトに、酸素、水素、炭素は”侵入型”のサイトに存在することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた液体Fe-Si-O混合系の構造的性質、結合状態を第一原理分子動力学シミュレーションから明らかにしている。また、Fe-H-Oなどの他の液体鉄混合系(3元系)のシミュレーションにも着手できている。そのため、(2)を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、液体Fe-Si-O混合系のより高圧力下におけるシミュレーションを行い、結合状態の変化と不混和性の関係性を調べる。また、液体Fe-H-O、Fe-C-O、Fe-S-O、Fe-Si-S混合系に関してシミュレーションを行い、液体Fe-Si-Oとの構造的・結合的な類似・相違点を明らかにしていく。また、これらの液体の機械学習型ポテンシャルを用いた分子動力学シミュレーションを実施する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で県をまたぐ移動ができず、当初予定していた対面での打ち合わ せ及び学会参加をオンラインに切り替えたことで未使用額が生じた。そのため、次年度は当初予定より密に打ち合わせを行いながら、成果発表(学会発表や論文投稿)に関する費用として未使用額を使用していく予定である。
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