2021 Fiscal Year Research-status Report
地震学的アプローチによる地球外核深部の不均質に関する研究
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21K03709
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
大滝 壽樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (00356643)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地球の外核最下部 / P波速度構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,地球の外核最下部数百 kmの地震波(P波)速度構造をマッピングすることを目的としている.この目的のためには,なるべく広い範囲にわたってP波速度を求めることが重要となる. 外核は,地球の中,深さ約2900 kmから約5150 kmにある.流体であるため,縦波であるP波は通るが横波であるS波は通らない. 本課題以前に二回に渡り特定の地域の外核最下部の速度構造を求め,その二地域の構造に違いがあることを求めた.しかし,地球全体と比較すると求まった地域は限られたものであった.また,この二地域の間は広く空いていた.これは,地震が起こる場所と観測点がある場所とがともに限られていることによる.また,外核最下部のような地球深部へ向かう波は地震から真下に近い方向に射出されるが,この方向への波の振幅が大きくなるような地震もまた限られていることにもよる. 今年度は,この空間的ギャップを少しでも埋めるべく,まず,以前の二地域の構造探査時と同じ地震観測網である日本のHi-netを使い,南米南部で起きた地震のうち一定の基準を満たすものの観測波形を網羅的に収集した.この地域は,以前の二つの解析でその波形を使用した地域の間となる.この地域からの地震波は,太平洋中部で外核最下部を通る.次に,集めた波形のS/Nを簡単に調べ,今後の解析でその波形を使用する地震を選別するとともに,残った地震波形で外核底を通過した波とその下の内核まで通る波とが個々の観測点に到着した時間の差を測定した.なお,この二つの波は,地震からの距離を選べば同一観測点で観測される.この時間差測定が今後の解析の基礎となる.このとき,地震から観測点に到達した時間そのものを用いないのは,地震の起こった時刻や外核より上の地殻・マントルを波が通る時間の誤差を含めないためである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析に使用する地震波形の収集・選別は,解析全体の中で時間のかかる部分であり,その部分で大きな進展が見られた.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降,今年度集めた地震波形にたいし,以前確立した構造探査方向を使い解析を行う.得られた解析結果を説明する地震波(P波)速度構造を,公開されている波形計算ソフトウェアを使い,フォーワードで求めていく. さらに,今年度網羅的に収集した地震波形の提供機関以外から公開されている地震波形も収集する.これは,観測点の置かれている地域が異なれば,構造探査できる地域も異なるためであり,探査地域を広げるために必要である.また,既に網羅的に波形を収集した観測網の地震波形記録についても,新たに起こった地震を対象に波形収集を続ける.これは,以前論文に纏めた地域の地震についても同様である.
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Causes of Carryover |
海外学会参加費として見込んでいた部分等から差引額が出た.次年度の学会参加費の一部として使用する予定である.
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