2022 Fiscal Year Research-status Report
地震学的アプローチによる地球外核深部の不均質に関する研究
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21K03709
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
大滝 壽樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (00356643)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地球の外核最下部 / P波速度構造 / 球殻上を伝わる波の分散 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,地球の外核最下部数百 kmの地震波(P波)速度構造をマッピングすることを目的としている.この目的のためには,なるべく広い範囲にわたってP波速度を求めることが重要となる.しかし,地震が起こる場所と地震からの波を観測する場所とがともに限られていること,外核最下部のような地球深部へ向かう波の振幅が大きくなるような地震もさらに限られていることのため,マッピングは簡単ではない. 我々は本課題以前に二地域で外核最下部の速度構造を求め,その構造に違いがあることを公表している.次の疑問は,どちらの速度構造が支配的であるのか,あるいは別の構造があるのか,である.この疑問に答えるため,この少し離れた二地域の間の空間的ギャップを少しでも埋めるべく,今年度は昨年度選んだ南米大陸の南部に起きた地震波形の解析をおこなった.観測網は,以前の二地域の構造探査に使ったものと同じ日本のHi-netである.この波形がサンプリングする地域は,我々が2015年の論文で解析した地域の南隣にあたる.解析は以前の論文と同様,外核ー内核境界上を掠める波の速度の周波数依存と掠める波と反射する波との時間差の二つの量を使っておこなっている.なお,後者については研究協力を仰いでいる.また,掠める波の振幅の距離変化についても予備的解析を行った. 得られた結果は,解析対象地域の外核最下部がその北隣と同じ速度構造で説明できることを示している.また,この結果は,2015年論文と今回の,独立した二つの構造探査で,同じ速度構造を支持する結果が得られたことを意味し,我々の解析の妥当性を示している. この結果は国際学会(12月)にて発表した. また,今回の対象地域および以前論文化した地域で新たに起きた地震についても,波形収集を続けている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本で観測された南米南部の地震波形は解析をほぼ終了し,結果の学会発表も行うなど,多少の遅れは見られるもののおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
今回対象とした地域の解析をさらに進め,論文発表を行う.また,他地域で起きた地震波形の収集・解析を進め,新たな地域での外核最下部速度構造を求め,より広い範囲で速度構造をマッピングすることを目指す.
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Causes of Carryover |
申請時には海外学会の現地参加を予定していたが,新型コロナ流行の継続をうけ,オンラインでの参加に変更した.このため,出張旅費として予定していた分より次年度使用額が生じた.この額は次年度以降の出張旅費に充てたい.
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Research Products
(1 results)