2021 Fiscal Year Research-status Report
地震震源の対蹠点で観測された地震波形による内核差分回転の定量化
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21K03710
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
坪井 誠司 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(地球情報基盤センター), 上席技術研究員(シニア) (90183871)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地球内部構造 / 地球内核s波速度構造 / 地震震源の対蹠点 / 理論地震波形 / スペクトル要素法 / 大規模数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、地震波の解析から内核内の深さ100kmに剪断波速度の不連続が存在することを示した。地球の内核を通過して地震対蹠点(震央距離> 179°)で観測された地震波形を、5つの地震-観測点の組み合わせに対してスタックした。アルジェリアのタマンラセット(TAM)とトンガの地震、およびブラジルのピティンガ(PTGA)とスラウェシの地震に対応する、内核を横断する2つの対蹠点経路は、PKIIKP波(内核境界での下側反射)の明確な前駆波を示している。波形スタックを行ったデータ(T> 4秒)に対して、内核内のP波速度とS波速度を変化させて、16を超える内核モデルを用いてモデル化できるかを試した。その結果、内核境界の下100kmの深さで、コアの液体/固体界面の下で反射するようにすることで。前駆波がうまくモデル化されることが分かった。この境界面は反射率が高く、5 km/s以上の剪断波速度に敏感である。またこの前駆波の前にも先行して到達する波が観察されており、TAMとPTGAでは、深さ約250km付近の明らかな不連続性としてモデル化される可能性があることも分かった。この内核上部の大きな剪断波速度を持つ構造は、PREM地球モデルよりもhcp-Fe鉱物学に類似していることが推測される。TAMの経路にほぼ直交する他の3つの対蹠点の地震観測波形(中国-チリ)は、内核表面から深さ100kmを超える領域ではPREM速度とより一致する地震波形を示しているが100kmの深さでの固体/固体の不連続性の明確な証拠は示しておらず、この剪断波速度の不連続面は内核全体にわたって存在しているわけではないことも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地震震源の対蹠点で観測された地震波形に見られるPKIIKP波(内核境界での下側反射)の明確な前駆波を、内核外核境界の下100kmの深さで、液体/固体界面を導入し、そのの下で反射するようにすることでうまくモデル化されることが分かった。この結果を論文として発表することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、地震対蹠点で観測される地震波形を用いて、流体の外核最下部のP波速度構造について検討を加える予定である。本年度の研究により、内核最上部には流体となっている領域が局所的に存在していることが分かっており、この領域の直上における外核最下部の構造を調べる。このためには、内核―外核境界で回折されるCdiff波を地震震源対蹠点で観測したデータを用いる。これまでの研究から、外核最下部にはP波の低速度層が局所的に存在する可能性が示されている。地震震源の対蹠点で観測された地震波形を見ても、チリ沖で起きた地震を中国の観測点で観測した波形には大きな振幅のCdiff波が見られることが分かっている。このような観測データを説明することが出来る外核最下部のP波速度構造モデルを仮定し、理論地震波形を計算してCdiff波の振幅を観測と比較する。さらに、本年度に得られた内核最上部の地震波不連続面について、その局所的な位置を決めるために、理論地震波形からS波速度構造に関するカーネルを計算する予定である。計算したカーネルから速度構造モデルの修正量を計算し、内核最上層部のS波速度異常の位置を特定できるのではないかと考えている。
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Causes of Carryover |
アメリカ地球物理学連合秋季大会に参加する予定であったが、新型コロナの影響で海外渡航が不可となり、そのための旅費が執行できなかった。次年度については、海外渡航が可能となった場合は、アメリカ地球物理学連合秋季大会への参加として支出する予定である。また、オープンアクセスの論文投稿料としても支出する予定である。
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